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大学院留学のあれこれ(香港・ファンディング編)

皆さんこんにちは、代表の荒木です。少し前になってしまいますが、理事の畠山と山田がそれぞれ「大学院留学のあれこれ」と「大学院留学(博士)のあれこれ」という記事で、タイトル通り大学院留学を考える際の参考情報を色々と紹介していました。私も以前、「オックスフォードから教育・社会を考える」シリーズの中で、留学体験記をお届けしましたが、これらは基本的に英米の大学が対象になっていました。

他方で、最近の世界大学ランキングなどからも分かるように、アジア(特に中国本土、シンガポール、香港)の中にも、国際的なプレゼンスが高く世界各地から留学生が集まってくるような大学も複数あります。私も一年を通して(特に次年度の大学院生選抜が行われるここ数か月)、「香港大学で社会学の博士号取得を目指したいのですが、指導教員になってくれませんか」という問い合わせがたくさん届きます。そこで今回から複数回に分けて、香港大学を例に、こちらの大学院進学に関する仕組みをお伝えしようと思います。

香港大学の概要ついては以前の記事「香港で転職した話」でも少し触れましたが、香港で一番歴史のある大学で、先述の世界大学ランキング2024年版(まだ2023年なのに既に2024年版っておかしくない、というのはさておき・・・)では世界26位にランクインしています(ちなみに1位はMITで、日本の最上位は東大で28位)。このテのランキングについては、畠山も様々な場所で指摘しているように懐疑的に見る必要がありますが、同時に、こうした情報を真剣に受け止めて進学先を考える人が世界中にたくさんいるのも事実です。

ちょうど今、香港大学で修士・博士課程を始めた1年生・約1000人を対象に「量的研究法(Quantitative Research Methods)」を教えるコースを担当しているのですが、受講生のバックグラウンドを見ると中国本土・香港出身が大半ですが、その他のアジア諸国や欧米、中東、アフリカなどからの留学生もいます。(蛇足ですが、私の授業は基本的にインタラクティブで、学生にたくさん発言してもらうようにしているのですが、この大学院生向けコースは非常に限られた時間で多くの情報を扱わなければいけないため、毎回約3時間ほど自分で話し続ける形になり、授業後は大抵グッタリ。。。)

香港大学の大学院が人気の進学・留学先となっている理由としては、上述の「国際的なランキングで上位にある」というレピュテーション(評判)や、実際に国際的に活躍している研究者の存在などが挙げられますが、これらに加えて重要なファクターとして機能しているのが、非常に充実した財政支援です。英米留学を検討する際、多くの人が直面する課題の一つが資金繰りですが(私もオックスフォード留学中は辛かった・・・)、香港大学では(香港にある他の公立大学も)、奨学金や研究資金のサポートがとにかく豊富。研究科ごとにバラつきはありますが、専門分野にかかわらず受給できるものとしては、以下3つが挙げられます。

1.HKU Presidential PhD Scholar Programme
詳細は上記の大学ホームページをご覧いただければと思いますが、これまでの学業成績が非常に優秀で、大学院進学中に高い成果が期待される学生に授与される奨学金で、以下のようなパッケージからなっています。

  • 1年目に現金40,000香港ドル(この記事を執筆している2023年11月10日時点の為替レートで約77万円)、2年目以降は毎年20,000香港ドル(同約39万円)

  • 授業料免除。フルタイムの場合、毎年約42,100香港ドル(約81万円)。お気づきのとおり、そもそも授業料が英米と比べると格段に安い。もちろん80万円は非常に高価ですが、相対的に見ると割安。

  • 別途奨学金毎月27,600香港ドル(約53万円)、年間331,200香港ドル(約640万円)。

  • 学会参加や調査に伴う旅費補助、毎年13,800香港ドル(約26万円)。

  • 大学内にある寮の部屋確保(1年目)。2年目以降も更新可。

  • 合計すると、1年目は427,100香港ドル(約825万円)、2年目以降は407,100(約790万円)が提供されることになります。

2.Hong Kong PhD Fellowship Scheme(HKPFS)
上記1は香港大学独自のスキームですが、HKPFSは香港政府の奨学金パッケージで、以下が含まれます。

  • 奨学金毎月27,600香港ドル(約53万円)、年間331,200香港ドル(約640万円)。

  • 学会参加や調査に伴う旅費補助、毎年13,800香港ドル(約26万円)。

3.Postgraduate Scholarships(PGS)
上記1-2ほど豪奢ではありませんが、広く提供されるのがPGSで、以下が含まれます。

  • 奨学金毎月18,390香港ドル(約35万円)、年間220,680香港ドル(約430万円)。

  • 順調に研究を進めて一次審査を通過した場合には、毎月の奨学金が18,890香港ドル(約36-37万円)にアップ。

以上の3スキームに加えて、以下のページにあるように、単発の旅費補助や特定の専攻対象奨学金なども色々と整備されています。

進学希望者や実際に大学院生活を始めた留学生などと話していても、やはりこのように充実したファンディングが魅力的だった、と語る人が多いです。ただ、先述のように進学希望者は少なくないため、競争が激しいのも事実です。では、どのような基準で選考が行われているのか、また大学院修了後の進路事情はどうなっているのか、、、といった点については、次回以降にご紹介していこうと思います。
 
サルタック代表理事 荒木啓史
 
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