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『料理雑記 その7:おひたせ愉快な仲間たち』

今日の夕食の準備も佳境に入った。
取り皿と箸はテーブルにセット済み。
ランチョンマットはお仕立て。
飲み物はよく冷えているし、グラスは曇りなく磨かれている。
サラダにドレッシングを添えて配膳した。
熱々のスープは、もう椀に注ぐだけ。
メインの肉はあと10分で焼き上がる。
さて、あと一品くらいなにか作れるか…

そんな「何かあと一品」などという、アバウトながらも3日に一度は頭にちらつく要求に幅広くお応えできるサイドディッシュと言えば何でしょうか?

いわゆる副菜の定番。
いわゆる定食に付いてくる小鉢の代表格。
いわゆる居なくてもいいんだけれども、居てくれるだけでなんだか安心している自分に気づかせてくれた、同じクラスの気になるアイツ的なおかずとは?

ご家庭により答えは違うのだろうが、強引に進めさせていただく。
我が家における、そんな「あと一品」の代表選手が今日のテーマ、おひたしである。

おひたし。
料理名というよりは、調理法の名前である。
一般的には茹でた野菜や山菜などを出汁に浸すもので、古くは浸物(ひたしもの)と記された。
なんと奈良時代の文書からもこの調理法があったことが推定されている。

また江戸時代には野菜だけでなくアワビやクラゲなどの海産物を用い、さらに出汁だけでなく煎り酒や酢で味付けしたものもあったと伝えられている。

今ではおひたしの定番であるほうれん草が日本に持ち込まれたのも江戸の初期であり、かの伊達正宗公も ほうれん草を食した記録があるという。
(おひたしで食べたのかは不明だが)

ちなみに現代では出汁に浸す過程を省き、茹でた野菜に醤油などで味付けしたものも、おひたしと呼ばれることがある。 

食材でありさえすれば何をどんなものに浸してもおひたしと言い張れることから、検索サイトなどでレシピを検索するとさぁ大変。
百花繚乱 絢爛舞踏 多種多様なおひたしレシピが犇めきあっていらっしゃる。
今回はそんな中から、選りすぐりの精鋭たちを紹介したい。


~ほうれん草のおひたし~
①ほうれん草を洗い、赤い根元も切り落として  よく洗う②鍋いっぱいの沸かしたお湯に塩を ひとつまみ加えて①を茹でる 根元は気持ち長めに茹でる③お好みに茹であがったらお湯を切り水でさらす④好みの出汁に浸す 我が家の定番は 濃縮白だし小匙1、水50ml、 醤油とみりん小匙½ずつ⑤味が落ち着いたら切って盛り付けて完成 根元は細かく刻むのがおすすめ

ザ・キング・オブ おひたし。
おひたしの基本であり定番。原点にして頂点。
ほうれん草の柔らかな甘味と染みだす出汁の味は
まさに安心の味である。


~白菜のおひたし 柚子風味~
①白菜の葉をよく洗い、食べやすく切る
②茹でる、お湯をきる、水にさらす
③お好みの出汁に、刻んだ柚子の皮と一緒に浸す
④味が落ち着いたら盛り付けて完成

シャクシャクとした白菜の歯応えと柚子の香りが
際立つ一品。
さっぱりしていていくらでも白菜が食べられる。


~ミツバ、マッシュルーム、ベビーホタテのおひたし~
①マッシュルームは石突きを取り 
 薄くスライスする
②少なめのお湯で①を茹で、同時に出汁をとる
③マッシュルームをザルにあけ、茹で汁50mlに
 濃縮白だし小匙1を加えて浸す出汁を作る
④ミツバを30秒間 茹でる
 水にさらしたら食べやすい大きさに切る
⑤洗ったベビーホタテも一瞬だけ湯にくぐらせて 臭みをとる
⑥マッシュルーム、ミツバ、ホタテを③の出汁に
 ひたして味が落ち着いたら盛り付けて完成

これは私のオリジナル。
通常の鰹と昆布の出汁に、貝とキノコの味まで
加えたスペシャルなおひたし。
複雑な出汁の味に乗ったミツバの香りが素敵。
日本酒にとてもよくあう肴。


~ニラのスタミナおひたし~
①ニラを洗い、茹でて、水にさらす
②食べやすい大きさに切ったら
 濃縮めんつゆ大さじ1、ゴマ油小匙1、 
 水大さじ1、白ごま少量を混ぜたつけ汁に
 ニラを浸す
③味が落ち着いたらニラを盛り付け
 シラスと卵黄を乗せる
 卵黄を潰してニラとよく混ぜてお召し上がりを

…これは、おひたしでいいのだろうか?
ゴマ油も使った和え物に近いのでむしろナムルなのでは…
いや深く考えたら負けだ、押し通せ。
うん、ニラのおひたしです。
おひたしにあるまじき食べ応えの、スタミナつまみです。ビールと相性◯。

まだまだ山ほど素敵なおひたしがあるのだが、ひとまずこれくらいにしておきたい。

食卓を賑わせ、時に華やかに彩り、箸休めとして、あるいはさっぱりしたおつまみとして、今日も活躍する おひたし達。
今度はどんなものを浸してみようか、楽しく考えながら食事を楽しむ今日この頃であった。

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