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不倫の末に運命の人に逃げられた私(30代後半/Aさんの事例)

成功談より失敗談からの方がより多くを学べる。どんなに悲惨な話にも、笑える余地はある。ササエル・タスケはそう考えます。どこかのだれかが赤裸々に語るどうしようもない「しりもち体験」を心理学的にしつこく深掘りし、余すことなく学びを得たら、何度でも懲りずに生まれ変わろうというコンセプト。転んでもただでは起きなかった数々のエピソードから、明日を生きるための笑いと勇気を見出しましょう。

マガジン『しりもち百貨店』の説明より

Q1 あなたの「しりもちエピソード」を教えてください。

A1 運命の人に逃げられました。

 20代後半、友人たちの結婚ラッシュに焦りを感じて駆け込みで結婚しました。ちょうど会社を辞めたかったので、専業主婦になれて幸運でした。夫とは婚活アプリで出会い、学歴的にも経済的にも問題はなかったものの徐々に価値観の違いが表面化。「とにかく結婚をしたい」という弱みで抑えていたお互いの遠慮がなくなった頃から、喧嘩が絶えなくなりました。1年が経過する頃には暴言を吐き、手当たり次第に物を投げ合うほどの関係に。

 そんなとき、独身の友人の誘いで別のマッチングアプリにこっそり登録。そこで運命の相手と出会ってしまったのです。夫に隠れて何度も逢瀬を重ね、心も体も完全に運命の相手と共にある状態に。自分の結婚が表面的で空虚で完全に間違っていることを確信。夫との間に子どもができないうちに離婚することを決意し仕事を再開。性格の不一致を理由に夫と離婚話を進め、半年後にようやく離婚成立。

 ところが一人暮らしを始めて間もなく、運命の彼と音信不通に。二週間に一回のペースで会っていたのに、電話をしてもメールをしても返信がないのです。死んでしまったのかと思うくらいに。
 離婚すればすぐに彼と結婚できるなんて、そんな都合のいい未来を描いていたわけではありません。でも、人生を大きく動かす情熱をくれた運命の相手が忽然と私の人生から姿を消したことは、さすがに堪えました。騙されたのかもしれないと思いましたが、これが詐欺だったとして、彼が得することはなにもありません。

 恋に浮かれて家庭を失い、運命の相手にのぼせて捨てられ、そして間の悪いことに実母も急死してしまいました。片親で一人っ子の私は、こうして一人ぼっちになりました。「いっときの気の迷いで、取り返しのつかないことをしたかもしれない」と、二日に一度は不安が襲ってくる日々でした。

30代後半/Aさんの事例より

Q2 その後、あなたはどうしましたか。

A2 誰かのせいにするのをやめました。

 家庭を失ったのは、私の意志でした。彼の音信不通と実母の急死は、私がコントロールできるものではありませんでした。誰のせいにもできないことが起きているのだと思いました。私はそれまで、あまりにも人のせいにして人に依存して生きてきました。その生き方の限界が来ていることを受け入れざるを得ませんでした。

 元夫には感謝をしなければならないと思います。そもそも最初の結婚は、社会生活での「嫌なこと」から逃げ込む隠れ蓑のようなものでした。でも、離婚してもなお20代の私は、隠れて生きるには若すぎます。実は別れた夫が専業主婦をさせてくれたおかげで資格を取得する時間があり、その資格を生かして仕事を始めることができました。元夫との間には酷い思い出もたくさんあるけど、元夫は社会の荒波と私の間に立ち、私が態勢を整えるまで時間を与えてくれた存在です。感謝しなくてはいけないと思います。

 逃げた運命の彼に対しては、裏切られた怒りなどではなく、なぜか悲しく申し訳ない気もちが湧きあがりました。社会の荒波から逃げた先(元夫)が気に入らなくて、さらに逃げ込ませてくれる誰か(運命の彼)を都合よく求めている私のずるさが、彼には見透かされた気がして恥ずかしくなりました。私は彼を愛していたわけではなく、大切にもできていませんでした。

 離婚と失恋だけなら、ここまで内省できなかったかもしれません。同時期に身内まで喪ったことで、自分の人生が「何かがおかしい。軌道修正を求められている」と感じられたのです。
 たった一人になったことで、他の誰のためでもない自分のために時間もお金も投資できるようになったことに気づきました。結婚とともに投げ捨てた自分への責任を取り戻すチャンスをもらったのだと考え、仕事を一生懸命にやりました。

30代後半/Aさんの事例より

Q3 現在のあなたについて教えてください

A3 「運命の相手」と再会し、結婚しました。 

 5年の年月が経ち、私が30代になってから彼と再会しました。私には過去の大失恋の痛みと、そのとき大事にしていた仕事があったので、以前ほど彼にのめり込むことはありませんでした。彼も急いで距離を詰めることなく、恋愛関係になるまでにもう一度はじめから出会い直しをしているように感じる期間がありました。本当は短い期間で激しい恋に落ちるのではなく、時間をかけてわかり合う必要があったのだと思います。

 彼とたくさん話をするうちに、出会った頃は互いに自分自身を愛せていなかったことが分かりました。私の方は仕事に誇りを持てるように邁進した5年間であり、彼も転職してキャリアアップした5年間でした。互いに少し成熟して出会い直したことで、激しく惹かれ合うままに過ごすのではなく、二人の時間を現実的に守っていくための具体的な方法を模索してくうちに自然と結婚に至りました。

30代後半/Aさんの事例より

Q4 この体験から、あなたが学んだことを教えてください。

A4 答えはいつも、自分の中にある。 

「どうしてあんなことを言ったのか(したのか)」と相手の気もちを妄想しても、おそらく答えは出ません。「何を考えているの。どういうつもりなの」と相手に説明を求めても、納得いく答えが聞けることはほとんどありません。そういうときは、答えは相手ではなく自分の中にあるからです。
 説明のつかない混乱に満ちた状況の中でこそ、「自分はどう在りたいのか」「自分はどう生きたいのか」を問われている。逆に言うと、「どう在りたいか」「どう生きたいか」を、いつでも自分で決められるということではないでしょうか。

30代後半/Aさんの事例より


「よくある不倫のしりもちエピソード」に収まらない哲学的な結末!
Aさん。貴重なしりもちエピソードの共有、ありがとうございました。



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