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#58 未来のためにできること 〜幸せの意味を99%まで考えること〜

「未来のためにできること」の「未来」は、50億年後に設定したい。なぜか?十年後に世界がどうなるかよりも、50億年後にどうなるかの方がよく分かっているからだ。50億年後、太陽は寿命を迎え赤色巨星となり、地球を飲み込む。世界が力を合わせて守った自然も世界遺産も、全て溶けてなくなる。

地球がなくなる最期の時には、世界中の言語や音楽、絵画で地球文明を表現して宇宙に発信することになるだろう。その時、地球の何を発信したいだろうか?全てを発信するには、地球文明は豊かすぎた。僕は愛でも夢でも感謝でもなく、「幸せ」という独特な感情が地球に存在したことを発信したい。


人間はモノやコトが豊富にある状態のみならず、何かが欠けた状態にも「幸せ」を見出す。僕はつい先日ハーフマラソンを走ったが、息が苦しくて足が前に出なくても、とても幸せだった。「幸せ」は物質的、精神的豊かさを超えた存在で、その複雑さは多くの哲学者を悩ませた。『異邦人』を書いたアルベール・カミュは、「幸せの中身を追求する限り、決して幸せにはなれない」とも残している。

カミュが記した「幸せ」の不可知性

「幸せ」の正体は蝶のようなものだ、と思う。蝶は直線的には飛ばない。捕虫網を振り回しても、ひらりとよけられてしまう。無理やり捕まえると、羽がもげ、鱗粉は落ち、飛んでいた時の優美な姿は原型を留めない。かといって近づかなければ、あの美しい姿は眺められない。できる限り近づいて、でも捕えずにおくのがよさそうだ。


いつか AI が人間の多くの知的活動を代替したとしても、人間は「幸せとは何か」を考え続けたい。そしてその追求は99%までしか可能でなく、最後の1%は人知を超えていることを受け入れるのが真摯な態度だろう。エジソンの名言、「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」にもつながる。最後の1%は分からないと知りながら、未来のために「幸せ」を追求した地球人の心意気を発信したい。

来館者が記した「私にとっての幸せ」

本エッセイは、デンマーク、コペンハーゲンにある、世界唯一の「幸せとは何か」を追求する博物館、The Happiness Museum を訪ねて感じたことを、当地に暮らした大切な友人と対話したことから生まれました。その友人に感謝すると共に、対話が何より強力な人間の思考手段であることを信じます。

(2023年9月19日)


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