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さもないごちそう 「はじめてのシュトーレン」


買って食べるものだと思っていたシュトーレン。
毎年決まったお店で買うわけでも、どこのが美味しいとか知ってるわけでもないのだけど、やっぱりこの時期になると食べたくなって、見つけたときに買ったり、買ってもらったりして食べていた。
去年ふと、「これ自分で作れるんかな?」と思い調べたところ、初見でわりと手間がかかるレシピにあたってしまったようで、自作することは光の速さで諦めた。

たけどやっぱり世の中がシュトーレンシュトーレン言い出す頃になると、むくむくと、「作れるんかな?」という気持ちが沸き起こり、次第にそれは「作れるんじゃない?」になり、わりと早めに「作りたいわ」へと変化した。

決めたことはなんでも夫にすぐ報告するタイプだ。
私の「シュトーレンを作ろうと思う」宣言を聞いた夫は、シュトーレンを食べたことがなかったためYouTubeで作り方を検索したらしい。後日、私に「なんか俺が見たやつ、本体を溶かしバターの中にズブブブブーって沈めてたよ…」と教えてくれた。うそ、なにそれ怖い。

私でも作れそうな(バターに沈めたりしない)レシピが知りたいとYouTubeで検索したところ、最初にヒットしたチャンネルの作り方がとてもわかりやすく、そちらで作ることに決めた。
ホームベーカリーでほぼほぼ毎日食パンを焼いているので、ドライイーストや強力粉は常備してある。コストコで買ったクルミもめちゃくちゃ大量に余っている。夫が飲むために買っていたラム酒もまだ残っているから、あとはバター、粉糖、ドライフルーツ、アーモンドプードルか。…いける。
揃える必要があるものが少なければ少ないほど、お菓子作りのハードルは下がる。

だけどそれらは近くのスーパーではちょっと売ってなさそう。
あそこのお店なら全部揃うはず…だけど子連れで行くにはちょっと遠いし…と渋っていたところ、私がシュトーレンを作ることを小耳に挟んだ実家の両親が、作ったら献上することを交換条件とし、足りない材料の買い出しをしてくれることになった(両親に頼りっぱなしの人生)。

右上の黒いなにかは、ドライフルーツのラム酒漬け。



役者は揃った。さて、はじめようか。

工程としては
1、パン生地を作る→発酵させる
2、クッキー生地を作る
3、二つの生地とドライフルーツ、クルミをあわせて混ぜる→発酵させる
4、成形して焼く
5、バターを塗りたくり、粉糖をまぶす

ふむふむ、スムーズにいって3時間くらいで完成するな。
ただし事前にドライフルーツはラム酒等に最低でも1日以上漬け込んでおかなくてはならない。突然思い立ち「今日なら作れる!」みたいな瞬間に作れないのはちょっと厄介(子育て中でも予想外に「空き時間できた…なにかできる!」という瞬間がときどきある)。

子の昼寝はだいたい2時間、長くて3時間。寝てから作り始めたのではちょっと時間がぎりぎりになってしまう。工程1の発酵は1時間くらいかかるから、寝かしつける前に生地を作り発酵をスタートさせたい。「生地作る(発酵スタート)→子を寝かしつける→寝る→発酵終了」の流れがベスト。…いける。

お昼ご飯を作りながら同時進行で材料の計量をすべて終わらせ、ご飯が終わったらそのまま生地を捏ねて、熱湯を注いだコップとともに発泡スチロールへどーん。子と遊びつつ、眠りへ誘いつつの時間を過ごしていたら、ちょうど発酵スタートから1時間程経ったナイスなタイミングで子が寝てくれた。勝ったも同然の奇跡だった。

おかげで発酵時間をもて余すことなく、すぐに次の工程へと進めた。
昨今、相当に勇気を振り絞らないと買えないくらいに価格が高騰しているバターをとんでもない量使ってクッキー生地を作る。
発酵済みのパン生地とあわせて練り上げ、ドライフルーツとクルミも混ぜ込む。ラムの香りがぶわっと一気に広がり、日常の台所ではなかなか嗅ぐことのない余所行きな香りにテンションがあがる。再度、発酵。


発酵機能のあるオーブンなんかないので
発泡スチロールで発酵させますよ



発酵が終わったら、成形。
シュトーレンてちょっと不思議な形してるけど、こうやって成形してんだな~とぼんやり思いながら、YouTube通り忠実に再現する。

折り畳んで、綿棒でギュッギュッ



そして180度に予熱したオーブンで40分焼く。
お菓子作りによくあるこの「予熱」っていうのも私にとってはちょっと厄介。いつ予熱スタートしたらいいのかがわからない。昔早めにスタートしちゃって、いざ焼くってときに予熱が切れてたときがあって、それを経験して以来、私は予熱の扱いにちょっと苦手意識がある。最近のオーブンならそんなこと起こらないのかな?単に私が機械音痴なだけなのかな?


ただ今回はこちらも奇跡的なタイミングで予熱スタートさせられてたようで、成形し終わったところで「ピピー」と予熱完了のお知らせが鳴り響いた。
ここから40分間はなにもすることがないので、とりあえずいつものようにネトフリで『男はつらいよ』を観ながら洗い物したり洗濯物を畳んだりしながらすごした(今年は『男はつらいよ』を観るという目標を密かに掲げていたのですが、ようやく29作目まで観終えました。だんだんと寅さんの面白さがわかるようになり、20作を越えたあたりでは、もう腹かかえて笑ってました。その話もまたいずれしたいです)。

どーーーーん

これは…上手に焼けているんじゃないか?!
オーブンを開けると、自分でも驚くほどにきれいに焼けていた。これは、嬉しい。
だが喜んでいる場合ではない。焼き上がったらすぐに、これまたとんでもない量のバターを刷毛で塗りたくらなくてはならない。
裏面にもしっかり塗り込むため、予想以上に大きくなった本体を持ち上げるのに少しびびったが、とにかくこの小鉢なみなみ一杯分のバターをすべてこの本体に染み込ませなくてはならないのだ。
無心で塗る。ただひたすらに。
「ほんとにこれ全部なくなるの?」と思っていたバターも気がつきゃ綺麗になくなった。


てかーーーー



そして間髪いれずに粉糖をまぶす。
シュトーレンは大量のバターと大量の砂糖のおかげで長期間楽しめるとのことなので、隙間なくまぶしまくった結果、出来上がったのは白いツチノコだった。

真白きツチノコ



そしてこのタイミングで子がお昼寝から目覚めた。なんちゅータイミングの良さ!!!ゆっくりからはじまる拍手で、今日のこの日を祝福した。

何日かおいた方が味が馴染んで美味しいらしいけど、そんなこと言ってられっかって話。翌朝さっそく食べてみた。


コーヒーとの相性が最高すぎた

めちゃくちゃシュトーレンやないかい。
これはめちゃくちゃシュトーレンやないかい!!!!!
一口食べてわかったことは、来年も絶対に作るということ。本当に美味しかったのだ。はじめて作ったからということもあるかもしれないけど、本当の本当に美味しかったのだ。
夫も、「今年はもう作らないの?これでおしまいなの?」と、だいぶ残っているのに、というか一切れ食べただけでここから少しずつ時間をかけて食べていくものなのに、初日でほんのり催促してくるほど気に入ってくれた様子だった。ただし、夫は今までシュトーレンを食べたことがないから他との比較の仕様がないのだけど、それはまぁ置いといて。



お酒がだいぶ効いているので子が食べるのはまだまだ先のことだろうけれど、いつか食べれる年齢になったら、「12月はママのシュトーレンが食べれるからなぁ!」みたいに、冬を待ち遠しく思ってくれたら、そんな嬉しいことってない。

こうして私のはじめてのシュトーレンは、大成功で幕を閉じたのだった。

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