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おごと温泉でバスタオルを絞る

少し前、写真家の清水さんと、滋賀県のおごと温泉駅で待ち合わせをしました。琵琶湖の西岸、おごと(雄琴)温泉の宿取材です。駅の階段をおりるとすらっとした清水さんの姿が見えたので、軽く会釈して自動改札へ。
「ピンポーン」
え? 残高不足?

「北浦さん、またピンポン鳴らしてたでしょ。あぁ北浦さんやなぁと思いました」。顔を合わすなり清水さんがそう言いました。
私は改札で頻繁に引っかかるので、列車を乗り継ぐ旅取材ではあたふたすることが多いです。
「北浦さん、さっきからぜんぶ鳴らしてるじゃないですか」と同行の清水さんに指摘されたこともあるくらい。って、自慢することでもないか。

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実は今回、編集部のTさんから発注の電話をもらった時、温泉旅館の取材と聞いて一瞬「う」と声が詰まりました。撮影で温泉に入るのって、嬉しくないですよ…。温泉の写真は誰かが入っているほうがいいから、お猿みたいに浸かっているだけなのですが。
私がゴネるのを知っているTさんは、「温泉のカットは遠くから引いた感じでいいので」と間髪入れずおっしゃいました。
だったらまぁ…。いいかな。
この歳であんまり嫌がるのもこっ恥ずかしいし、とも思いますが、どうなんでしょうね。

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撮影で温泉に入るとなると、厄介なのが、そう、入浴用の大判バスタオルです。宿のバスタオルだと色やサイズが予測できないので、いつも白い大判バスタオルを持参しますが、これがもう、行きはいいけど、帰りが重い。
ぐっしょり水を含んだバスタオルを背負って旅をしたこと、ありますか?
ないですよね、ふつう。

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温泉宿の取材では、撮影後に可能な限り水気を絞って窓の外に吊るしておきますが、吊るしたところで焼け石に水というか、バスタオルに水なんです。
バリバリに凍っていることもあるし。

「脱水したいので洗濯機を貸してください」
私はずっと、各地の温泉宿で言いたかった。
が、お願いするわけにもいかないので、おごと温泉でも四苦八苦して人力で絞りました。
ちなみに日帰り温泉の時は、撮影が終わるとそのままポリ袋に詰めて、次の現場に向かうこともありました。あれが一番重かったかも。

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一泊した翌朝、宿の方に自家菜園を案内してもらいました。
雨の中、長靴を借りて傘をさし、琵琶湖を望む広い畑を歩き回ること小一時間。料理長さんが土の中からカブラを引き抜くところを清水さんが撮影し、一泊二日の仕事がすべて終わりました。
見事な葉っぱ付きのカブラは「お土産に」と持たせてくれたので、ありがたくいただきました。(いいお宿でした)

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帰りは収穫したてのカブラとパソコン入りのカバンを持ち、ずぶ濡れのバスタオルが入ったリュックを背負い、おごと温泉駅から電車に乗りました。
そして途中の大阪で、清水さんとインド料理屋に寄りました。カブラを脇に置いて650円の薄いカレーを食べながら、今後の仕事についてぼそぼそと語りあう私たち。ささゆりの旅は来年も続きます。

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(写真・清水いつ子 文・北浦雅子)

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