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人間のカラダはガソリン車?電気自動車?

走るオヤジの初心者生物学講座♪
ランニング業界では、盛んにVO2maxとか無酸素性代謝とか糖質とか脂質とか言われているけど、人間のエネルギー機構について、根本的なところは知らないひとが多いんじゃないだろうか。人間のカラダは、食物と酸素からエネルギーを作っている(らしい)ことは、誰でも知っているが、もうちょっと突っ込んで見てみよう。
ちなみに、トレーニングの役には立たないと思うので、あしからず。

人間のカラダは「発電機搭載電気自動車」

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さて、タイトルの問題、答えは「発電機搭載電気自動車」。
ちなみにハイブリッドカーではない

食べ物をガソリンだと考えてみる。ガソリン車は、ガソリンの燃焼エネルギーを、直接動力に変換し、車輪を回転させる。ガソリン→ピストン→クランク→ドライブシャフト→車輪・・という感じか(雑ですみませんw)。燃焼エネルギーを回転エネルギーに変換するのがエンジンの仕事とも言える。

これに対して、電気自動車は、すでにどこかの発電所などで変換済みの、電気エネルギーを動力とする。モーター(電気を回転エネルギーに変換する装置)はあっても、エンジンはない。人間で言えば、食べ物を食べないで(消化吸収なしで)、「栄養(電源)だけくれ」といっているようなものだ。点滴?いや、点滴ですら、発電機(後述)が必要になる。

また、ハイブリッドカーは、電気エネルギーでも動くが、エンジンも搭載している。ガソリン車と電気自動車の両方の性質を持っているといえる。このエンジンはもちろん、直接車輪を回すこともできるし、バッテリーを充電することもできる。

さて、では人間のカラダは、上記3種類のどれに一番近いか・・・どれでもない。まず、人間は食物(ガソリンに相当)を必要とするので、エンジンを搭載しているといえる。だが、燃焼エネルギーを直接動力に変換する仕組みは持っていないのだ。

本当のエネルギー源はATPだけ

回りくどくなったが、人間(というか全生物)は、細胞内にATPというバッテリーを持っていて、食物の燃焼エネルギーはこれを充電するために使われるのである。そして、充電されたATPだけが、あらゆる運動や化学反応のエネルギー源(生体エネルギー)として利用可能なのだ。ガソリンが直接車輪を回す自動車と、一度蓄電池を通さなければならない生物。違いがわかっていただけるだろうか。

また、もしも人間が電気自動車に近いと言うならば、食物ではなく、ATPを直接摂取しなければならないことになるだろう。

エンジンは積んでいるが、あくまでもそれは純粋な発電機として機能しており、蓄電池(ATP)の充電のために存在する。というわけだ。

ATPはエネループ

ATPなんぞや、はウィキペディアでも調べていただくとして、イメージだけ解説してみたい。ATPは充電済みの状態で、未充電のものはADPという。充電と放電を繰り返すことができるので、蓄電池のイメージなのだ。

また、車のバッテリーや、ケータイのバッテリーなどを想像してはいけない。単体では蓄電量が非常に小さいからだ。車に例えれば、おなじみの自動車用バッテリーの代わりに、200本くらいエネループの大群が詰まっている感じだろうか。

ひとつの容量が小さいなら、人間一人あたり、さぞかし大量のATPを保有しているんだろう、と思われがちだが、そうでもない。

人間の心臓が停止すると、5分で約半数が死亡するらしい。心停止とは、即ち酸素供給の停止。発電機の大部分(無酸素系を除くという意味で)が停止するということだが、もし十分な量の蓄電池があれば、長時間持ちこたえることができるはずだ。人間の保有しているATPは、フル充電でも、数分しか命を繋げない量といえる。

細胞内発電所

さて、ここまでの話で、「ATPが血液と共に全身を循環している」イメージを持つ方もいると思う。が、それも違う。蓄電池も発電所も、基本的にはそれぞれの細胞が保有しているのだ。細胞は、文字通りの意味で、ひとつひとつが生物なんだな~、生物学のロマンw

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それぞれの細胞は、各自で発電所と蓄電池を備えていて、自立して生きている・・・はずだが、残念ながら、そうはいかない。単細胞生物以外は、細胞たちは共生関係にある。高度に分業化された大都市のようなものだ。まず、表皮から遠い細胞の周辺は、酸素がない。食物(燃料)だって、自力で獲得することは不可能(筋細胞などは独自に燃料を備蓄しているが、それも自力で獲得したものとはいえない)。そこで、物流システムとしての血管網が重要となる。酸素と燃料を供給することで、各細胞が自活できるようになっているのだ。

必要な酸素と燃料が、必要なタイミングで届いてようやく、発電ができる。
この発電を代謝という。ここでようやく、脂質代謝と糖質代謝の違いとか、無酸素系と有酸素系とかの話を始められるのだ。・・・が、それは別の機会に。

発電→充電→放電

まとめてみよう。
まず、血液を通して、燃料と酸素が細胞に届く。
細胞では、燃料を燃やして発電を行い、得られた電力は全て、蓄電池に充電される。
蓄電池は、各細胞で必要な生命活動で消費され、発電所で再利用される。

※※最後まで読んでいただき、ありがとうございます☆スキ(↓)が集まるようなら、もっと生物学シリーズ書こうかと思うので、雑学として気に入っていただけたら、よろしくお願いします。

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