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ここでは、すべてが遙かに遠い

海と河の交わる汽水の町。
空の下、河口が大きく拡がり、
海へと流れ込む。
河の音が、海と交わる。
微かに波の音が聞こえる。
長い旅を経た山の水は、
ゆっくりと、ゆっくりと
海水に溶け始める。

ここでは、すべてが遙かに遠い。
いつか私の息が絶えるとき、
私の意識もまた、
ゆっくりと大きな意識に
戻っていくのだろう。
河の水が海に戻っていくように。

何故かすごく、こころの底が
暖かくなるのを感じた。

誰も自分を知らない汽水の町で
春を迎えたいと思った。

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