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そして旅は続く

そして旅は続く

この先は海で戻る道を知らない
漁船に人影はなく
遠くの犬の声も聞こえない
ずいぶんと前に陽が沈んだ気配があるのに
いっこうに昏くならない

湿度を含んだ重たい風が
背骨をぬらしている
歩き回っているときに
靴音が聞こえないことに気づいた
疲れた身体を引きずると
音が消えるのだと納得した

空腹なので手を広げてみた
たくさんのものを見失ったから
手の中が空っぽになってしまった
ポケットを探ろうとしたが
小さすぎて手が入らない

砂と海の間に
細い白線が浮かんで見えたので
旅はまだ終わらないのだと知った
遠くの灯台に灯りが見えたら
また歩き始めよう
自分では終わることのできない旅を

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