あの日の猫背 | 珈琲&文学note

読書と音楽と珈琲と旅が好きです🇮🇳🇳🇵 珈琲と本の紹介、音楽と街をテーマにしたエッセイ、自…

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読書と音楽と珈琲と旅が好きです🇮🇳🇳🇵 珈琲と本の紹介、音楽と街をテーマにしたエッセイ、自作誌などを投稿してます📚🖋️ はたまた一方では、「sathi coffee/サティ珈琲」という焙煎屋をやってます☕️ 珈琲のインスタは右下から。↘️

最近の記事

【詩作】死なない

だるい花粉の嵐に 四月がくしゃみで消え飛んだ 遠くで聞こえる踏み切りの音 汗ばむ街の匂いを連れた西陽が 黄ばんだカーテンの裾から 滲み出る 風に吠える若い犬と 冷たい春 時代のコントラストは やさしさと傷痕で成されて 同じ顔した人は 同じ血を巡らし 濡れた体を遊ばせる 路面に咲く季節を蹴飛ばして、往く 毎日早起きしても 僕は朝日を知らず 黴臭い畳の上で体液を零すだけ 宇宙を作ってはこわす この腕を だらりと床に落とし ただ死なないだけの 僕が生きている くしゃみが出て 脂

    • 【詩作】冬の夜

      チェーン店のファミレスで 胸の小さなウエイトレスが僕に寄る しばらく僕は、目を逸らしながら考え込み ドリンクバーを頼んだ 冷たい言葉をたくさん選んでも 心の中までは冷やせなかった そびえ立つ妥協の壁に 安くて苦くて熱いコーヒーをぶちまけた 泥水みたい ねえねえと甘ったるい声で彼女 ねえ、ねえ、湿っぽい関係を続けられるなら 誰かの尺度で生きるのも楽しいのかもね しがない日々にロマンスは要らなかったと、 国道沿いで立ち止まる うねる前髪に積もる冬の夜 自意識だけが溶けずに残る

      • 【音楽と街】すばらしい日々

        14歳、15歳。 ニキビ面の思春期真っ盛りだったあの頃、 僕は北海道の田舎の町で鬱屈した日々を過ごしながら、音楽を聞いていた。 僕は音楽が好きで、読書が好きで、 流行ってるとか 皆が聴いてるとか読んでるとか、そんなことはまったくどうでもよくて、自分が好きだと思ったら胸を張って好きだと言っていた。 音楽は90年代のロック。 94年生まれの僕にとっては、自分が生まれる前後の時代の音楽。 スピッツが一番好きで、あれから15年ほど経った今も変わらない。スガシカオやミスチルや、イエ

        • 【音楽と街】散歩のススメ

          歩くことが好きである。 散歩好きである。 人より些か悠長な性分で、マイペース、のんびり屋だった。 そう言えばまだ聞こえはいいかもしれない。 が、この性格は同時に、要領が悪かったり、効率的に考えることが苦手だったり、周囲のペースに合わせることが難しいという面もある。 仕事やコミュニケーション、団体行動など、あらゆる場面でイライラされたし、たくさん怒られてきた。 なかなか苦労の多い性格で、治そうと思っても難しい。ぶっちゃけ生きづらい。 どうしてみんなそんなに要領よく、器用に

          【詩作】月あかり

          街角の低気圧と鉢合わせて 今日の私は アルマジロ のんべんだらりと 生きていたら バス停のとこに 君を見た気がするよ あれって夢だったのかな そんな時でも君は 後ろ姿なのね 人が死んだニュースを見たとき 安吾の文庫を手にとって 新しい気持ちに堕落した Xの中に 埋もれた自由を 真っ当してるだけで、可笑しいかしら 新月と三日月の間の頃に セーラー服を翻し、 スニーカーの踵を踏んだら 無灯火で自転車こいで 君に会いに行くの 闇の雲間にさした 明かりの魔法で 私はとても可愛くて

          【珈琲と文学】宮本輝『道頓堀川』

          今日の文学案内は、 宮本輝の『道頓堀川』です。 あらすじ解説 ※軽いネタバレ有り舞台は高度経済成長期の大阪、ミナミの歓楽街、道頓堀川界隈。 主人公は両親を早くに亡くし、喫茶店「リバー」に住み込んでアルバイトをしている学生、邦彦。絶賛就活中だが、書類選考で落ちる日々が続く。 金なし、コネなし、彼女なしの彼の生活は、孤独と哀愁を帯びている。 そんな彼を優しく見守る「リバー」のマスター武内が、もう一人の主人公。 温和な印象を持つ武内だったが、かつて家庭を顧みずに玉突き(ビリヤー

          【珈琲と文学】宮本輝『道頓堀川』

          【音楽と街】梅田の片隅、あるいは世界の真ん中で

          2018年、5月。深夜。 僕はその日、行くあてのない浮浪者同然で、背中を丸めて梅田の薄汚い路地裏にしゃがみこんでいた。 建物と建物の間に挟まれた暗い路は、飲み屋のダクトから吐き出される油の臭気と熱気に満ちていて、僕の額に嫌な汗を浮かばせる。あちぃ、くせぇ。 目の前の通りを、茶髪にスーツ姿の男たちがゲラゲラと笑いながら通り過ぎていく。あれはホストか何かだろうか。 ああいう人たちって、どんな生活をしているんだろう。金と欲望の渦巻く夜の世界に生きて、きっと普通ではない感覚がある

          【音楽と街】梅田の片隅、あるいは世界の真ん中で