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【着物関係ないコラム】アパレル産業のニュースから読み取る「服を着ることの意味」の変化


こんにちは、着物コーディネーターさとです。

2020年から続く新型コロナウィルスの感染拡大、
それに伴う自粛要請などから、
アパレル産業の不調のニュースが度々報じられていますね。

シンプルにまとめると、
・出かける用事がない→衣服の購入をしなくなる
・アパレルショップの営業方法がコロナ禍の今とマッチしていない

という理由があるのでは?
と、私は思っていました。

しかし、各媒体のニュースを読んでいると、
その他にも要因があり、
ファッションは何のために存在しているか
という根源的な疑問も感じました。



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各種ニュースから読み取れる事


これは昨年12月の記事です。


この記事内では、
オンワードHD、三陽商会、青山商事などの業績不調と、
それに伴う希望退職募集などの企業の対応を、
時系列にまとめた表が記事内に掲載されています。

青山商事はご存知の通り、
スーツ屋さんの「洋服の青山」の企業ですね。
安価な価格設定と、
郊外の駅前などでの店舗展開が特徴だと思います。
オンワードHDはシックな女性向けの服をメインに展開しており、
海外ブランドや法人向けユニフォーム事業も展開しています。
その他、企業名が上がっているブランドも、
どちらかと言えばビジネスウェアやカジュアルには分類されないブランドが多いと私は感じました。

セシルマクビーのジャパン、
夢展望などの所謂「ギャルブランド」の不調も取り上げられていますね。

これも私の個人的視点ですが、
どちらも女性性を強調したブランドだなぁと思います。
ボディラインを強調するデザインや、フリルのたくさんついた服を扱っていて、
セシルマクビーはギャル文化を牽引してきたブランドとしても印象が強いですよね。
昨今はジェンダーレスの風潮が強いので、
こういったファッションは「少数派」だったのかもしれません。



こちらは昨年4月の記事です。
さきほどの記事とは主旨が逆で、好調だった企業の事を取り上げていますね。
「流動比率」という財務指標でランキングしています。
この時点では、ファッションセンターしまむらやハニーズ、
タイツのアツギの業績が好調と報じられていました。

しまむらは商品を仕入れて販売しており、独立店舗を展開しています。
一方、ハニーズは流行後追い型で、
シーズンではなく短いスパンでの商品展開をし、イオン系列店などにテナント出店しています。
この2つの企業に共通するのは、どちらかと言えば財務管理の上手さだと私は感じました。
1位と評価されたのは訪問販売が主体の女性用下着のシャルレ、
3位のアツギも服飾品というよりはタイツが主力商品です。

この2つの記事から、
・財務管理をしっかり行っていた企業
・生活必需品に近いポジションの商品を扱っていた企業

の方が影響を受けにくかった、という事も読み取れると私は感じました。



こちらは昨年11月の記事です。
記事内ではアパレルと分類される企業の経営手法、
また、在庫を大量に抱える従来のやり方の見直しの必要性について触れています。

倒産した企業や全店閉店になってしまった企業の方を、
センセーショナルに報じるニュースの方が多いのが現状です。
(不安を煽る方がPV数に繋がりやすいので、
メディア側としてもお金に繋がりやすいのでしょうね。)

先日、こんな事も報道されていました。


40店全てが衣料品店ではありませんでしたが、
百貨店の不調が報道される中、
明るいニュースだなぁと感じました。

また、こんなニュースも。


ワークマンは、スーパーのベイシアやホームセンターのカインズホームと同じベイシアグループに属する企業です。
つまり、ホームセンターと同じようなやり方で服を売っています。
私の周辺では、
一定年齢以上の男性からすごくアツい支持を得ているんですよね。笑

興味がわいて、何回か店舗に行ってみたことがあるのですが、
まず、メイン商品は専門職の方が着るような作業服なんです。
そしてすごく安い。
これなら実用品と同じ売り方で問題ないし、
接客やセールに伴う庶務雑務など、
通常のアパレルブランドで必ず発生する作業が、少なくて済んじゃいます。
もちろん、在庫をセールで売って乗り切るアパレルブランドとは、
商品の動き方も違いますよね。

なにより、他の企業と違うのは
・必需品としての訴求がバッチリできていた、
 =不要不急とみなされなかった事
・セールをしなくても売れるビジネス展開

なのではないでしょうか。

最近ではSNSでバズって、
バイク愛好家に防水防寒ウェアが売れたり、
滑りにくい厨房シューズが妊婦さんに売れたりしてるそうです。
(上記のリンクの記事にこのへんに事も紹介されています。)


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上記のニュースを踏まえた上での私の所感ですが、
今後の消費の傾向として、
誰にどう見られるか=誰にどう評価されるかではなく、
個人の満足=自分がどうしたいかを優先していく流れになるのでは?
と感じています。
スーツ等、ビジネスシーンに着用できるような服を扱う企業が
比較的早期から不調だったのも、
ビジネスで実際に人に会う機会が減少した事とも、因果関係があると思うんです。

人に会う機会の減少、
また、「買い物」という行動を起こさなくなる状況が、
これだけ「服を買わない」に繋がるという事実は
ファッションの役割を、図らずとも証明した形になった
とも言えないでしょうか。
どこの企業が倒産したのか、どのブランドがお店をたたんだのか、
だけが大事な訳ではないです。