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【着物コラム】成人式に振袖を着るのは当たり前なのか?成人式の原点を調べてみた


こんにちは、宮寺理美です。

今日は2021年1月11日、成人の日です。
今年の成人の日は、各所で式典が中止や延期になったり
オンラインで開催に変更になったり
決行しても中止にしてもSNSでグチグチ言われ易い感じになってしまい、
結果的に色々やりづらい年になってしまったなぁ、
と個人的には思います。
でも、色々言っている人の大多数は、
とっくに成人式が終わっている人のように見受けられました。

今日が「新成人の皆様の門出を祝福する日である」という事実は揺るぎないと思います。
新成人の皆様、おめでとうございます。

さてさて、
成人式といえば「振袖」がセットですよね。
現在では当たり前ですが、
調べてみたら、意外に最近始まった習慣でした。
今回は、成人式と振袖の事について書きたいと思います。



成人式の始まり


成人式の起源を、武士の「元服の儀」だと思っている人、
実は結構多いんじゃないかな?と思います。
でも、実は結構最近開始されたそうなんです。

着物およびその周辺の風習(特に成人式や結婚式)については、
ビジネスの都合で「伝統」が謳われることが多いのです。

が!
結婚式という挙式の形式が民間に定着したのは意外に最近で、
皇族の挙式が話題になったのをきっかけに、
現在の東京大神宮が明治30年代以降に「神前式」を創設し、
ビジネス的に展開したんだそうです。
(江戸時代は「結婚式」じゃなくて「祝言」ですからね~)
ご興味のある方は東京大神宮のHPをご覧下さい。


では、成人式が始まったのはいつ頃なのでしょうか?

成人式発祥の地については様々な見解や主張があるようなのですが、笑
私は埼玉出身!という事で、
埼玉県蕨市で行われた、
成人式の原型であるとされる「成年式」について触れたいと思います。

蕨市のHPに、「第1回蕨町青年祭・成年式」の様子が掲載されていました。
一部抜粋します。

“成年式が初めて行われたのは、終戦の翌年、昭和21年(1946年)のことでした。
当時は、国全体が敗戦による混乱と虚脱感で明日への希望が見いだせずにいました。
そうしたなか、蕨町青年団が中心となり、次代を担う若者たちを勇気づけ、励まそうと、「青年祭」を企画。
その催しの幕開けとして行われたのが、「成年式」でした。”


どうでしょうか?
現代の成人式のニュアンスとは、どえらい違いを感じませんか?

終戦は1945年。
現在、終戦の日とされているのは8月15日ですが、
すぐに戦乱が終わったわけではありませんよね。
「青年祭」が行われたのは、
1946年11月22日~24日だったそうです。


成人式と着物


1940年7月、
バリバリ戦争中のご時勢ですね。
この時期に「奢侈品等製造販売制限規則」という法令が施行されています。

コレ、要するに、
戦時中の「ぜいたくは敵だ」の法令ですね。
法令の詳細が知りたい方は国会図書館デジタルコレクションをチラ見するのがオススメです。
中古品の販売にまで言及されていて、
なかなかのハードさでした…

和装業界はこれによって大打撃だったのではないでしょうか。
成人式の発足は、
和装業界にとっては絶好のチャンスだったはずです。



昭和30年10月発行「きもの読本スタイル」
昭和33年1月発行「若い人のきもの」
掲載されていた若い女性向けの礼服が
振袖ではなく「訪問着」でした。
これは現在では準礼装、という括りの着物です。
簡単に言えば
「シンプルで控えめ、かつ、かしこまった場に合う、既婚・独身どちらでも着用OKな着物」です。

福島県いわき市のHP福井県大野市のHPに、
成人式に着物を着用するのが普及し始めたと思しき、1950年代後半ごろの写真が掲載されています。

当時のいわき市のお嬢さんたちも、
やっぱり振袖ではなくて訪問着を着ているんですよね。
大野市は洋服で参加する人の中に少しだけ着物の参加者もいますが、
振袖と比較するとめっちゃ普段着!

発足してからしばらく経っても、
「成人式には第一礼装である振袖を着よう!ハタチの振袖は特別!」
って感じじゃなかった、と私は読み解きました。

福島県いわき市のHPにも、ちょこっと掲載されていたのですが
「新成人の着物、派手すぎやしないか論争」があったようなんですよね。

まぁでも、そんな周囲の声とは裏腹に、
成人式の着物はどんどん派手になっていったそうです。
そらそうだ!笑
人々のお洒落欲は誰にも止められないんですよ。
それは歴史が既に証明していますからね。笑


先日「振袖のカジュアル化」についての記事を書いたのですが、
様々な事情により市場も変化していますよね。
2022年には成人年齢の引き下げが決定しています。

成人年齢の引き下げは民法によって定められていますが、
成人式の開催は各地の地方共同体です。
対応にバラつきがあるかもしれないな、と私は思います。

これが新しい風が吹くきっかけになる可能性もありますが、
成人式に振袖を着る習慣ごと衰退する可能性もゼロではないのでは?
と私は思っています。

1950年代以降の成人式の着物は、
参加者にとって「どうしても着たい」という欲望をかきたてる存在だったのではないでしょうか。
(戦争によって色々な物を抑制されていた反動もあるかと思います。)

また、成人式の意義も変化していますよね。
「若者を励まさなければならぬ!」という発足当初の主旨と比較すると、
きれいなおべべでみんなで集まってお祝いするイベントに様変わりしていっていますよね。

2007年に成人を迎えた私は、当時ギャルブームの最中だったせいもあり、
肩を出した花魁風着付けへの批判があった事を記憶しています。
でも本人達は「は?だから何?別によくね?(ギャル口調)」って感じで、
特に気にせず楽しんでいらっしゃいました。笑
修羅の国でおなじみの北九州市の新成人の皆さんの装いも然り、
「この服がどうしても着たい」のパワーには誰にも勝てません。

これらは、
お上品な日本の伝統としての着物を推進したい側の方々からすれば、
意思や利益には反するブームなのかもしれません。
しかし、こういった「どうしてもこれが着たい」という気持ちをムクムクと沸き起こさせるような訴求が
ハタチの振袖は特別
だけでは不十分では?と私は思います。

ちなみに、私はここ数年、
小悪魔agehaの振袖デジタルカタログを楽しみにしています。


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