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「生まれるまで分からなかったの?」

8月に生まれ三男は生後三日後にダウン症と診断された。

実は生まれるまでダウン症があるとは、私たちは当然のこと、担当医さえも分からなかった。

よく聞くのは、定期検診で胎児の特徴からダウン症の可能性が示唆されたりするそうだが、この子の場合はそれも無かった。
それに、出生前診断も受けていない。

ただ、上の子たちと違う心配はあった。
妊娠後期になるにつれて成長が芳しくなかったのだ。

正常なら臨月に入ればみるみると体重は増え、ラストスパートという感が出る。
ところが三男の場合は成長が滞っていた。
こども病院にて精密検査も受けたが異常なし。

しかし、最終的には胎内での成長が見込めないとのことから、予定日を待たずに人為的に出産を促すことになった。

思いもよらぬ緊急入院。
そして、落ち着く暇もなく、誘発分娩のために子宮口にバルーンを入れる処置。
翌日には促進剤を投与して出産する予定となった。なお、それでも出産に至らない場合は帝王切開。

妻も私もスピード感についていけない。
されるがままの状態だ。
もう無事に生まれるなら好きにしてくれと、まな板の上の鯛になった。

そして、2日後には生まれるだろうとの担当医の予想に反して、翌朝に出産を果たした。
促進剤も投与せずの自然分娩だったから医師も助産師も驚いていたらしい。

生まれた赤ちゃんは即NICU入院。

これ以降はこちらに書いた話となる。


そういうわけで三男は通常の出産とは少し違う経過を辿ったものの、診断までダウン症のダの字も示唆されることはなかった。

これについて、医師や病院を非難するつもりは少しもないし、出生前診断をしなかった後悔もない。

最近「生まれるまで分からなかったの?」と何人かに聞かれた。

逆に分かっていたらどうしろと言いたいのだろうかと思ったりもする。

もし出生前診断を受けて、事前に発覚していたら私は堕胎を選択しただろうか。

いや、変わらず産んでいると思う。

「どんな子でも可愛い」という綺麗事ではなく、命を選別し、殺めてしまう業を背負える強さがないからだ。

出生前診断を受け、異常が見られた場合に堕胎を選択するケースは9割にのぼるらしい。
いろんな思いがあるし、誰にとっても重い決断を迫られることだと思う。

実際に堕胎された方のnoteも拝見した。
私はその9割の選択を悪だとは思わないし、否定する立場でもない。もちろん推奨もしたくない。

経済的な理由や、周囲から理解が得られないなど、致し方無い場合がある。

一方で1割のそれでも産んだという中には、夫婦間の相違で離婚に至ったケースもある。

何が正解かは分からない。

「生まれるまで分からなかったの?」
と聞いた方も、他意なく単に気になっての発言だろう。
いずれにしても過去は変えられないし、変えるつもりもない。

それに、少しずつふっくらしてきた三男はとても愛おしい。

三男が生まれてきてくれて良い方に変わったことがある。箇条書きにしてみよう。

・夫婦仲がより良くなった。
・不仲だった兄弟との関係が改善されてきた。
・人の愚痴や悪口を言わなくなった。
・子どもたちと接する時間が増えた。
・嬉しいと感じること増えた。

すべて三男をめぐる様々なことから、あらゆる意識が変わってきた。

札束のベッドで両脇に美女を侍らせるパワーストーンの広告(昔のジャンプの巻末広告にあったやつ)みたいな人生激変ではないが十分上向きだ。

雑誌の裏の広告


三男が生まれてきてくれたおかげだ。
だから、生まれるまで分からなかったけど、全然不幸じゃないってこと。

でも、パワーストーン買ったらもっと良くなるのだろうか。
もう昔のような広告が載ってないのが悔やまれる。買えないじゃないか。

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