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USJ シャーロック・ホームズ ~呪われた薔薇の剣~ / レビュー・考察・オススメ席

2021年のユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィンイベント。今年はユニバーサル・モンスター・ライブ・ロックンロール・ショーの施設で、「シャーロック・ホームズ」のショーが開催されました。ショーの内容は賛否両論あったようですが……。なので、私的レビューと考察、オススメの席について書いていきます。
※ネタバレが含まれるのでご注意ください。

簡単なあらすじ

1913年。実在する呪いの剣、呪われた一族をモデルに映画が製作された。それがこのサイレント映画『呪われた薔薇の剣』だ。撮影途中で主演女優のマーガレット・ウッドが死亡したこともあり、この映画自体も呪われているのでは、と噂されている……。
別の女優が起用され、本作はなんとか完成。そして今日、ついにこの舞台で完成した映画が上映される。


【レビュー&考察①】主役はモリアーティ

本ショーの前にロビーで「映画公開記念プログラム」なるものが配られました。そこに書かれている製作(配給?)会社の名前がなんと「モリアーティ・フィルムス」。シャーロック・ホームズの宿敵モリアーティの名前の会社です。きっと偶然ではないでしょう。
実は本作の主人公はモリアーティなのです。

今回の事件の犯人は、愉快犯でも快楽殺人犯でもありません。嫉妬に駆られて殺人を決意しました。それまではただの女優だったアリス・ゴーモン。彼女がこんな恐ろしい事件をたった1人で思いつき、実行した……とされました。
ホームズが解き明かされたそのトリックを実行するには、かなり運が必要で無理筋な部分もあります。さすがに1人で全てやるのは無理では?と感じました。しかし、その裏で糸を引っ張っていたのがモリアーティ!と考えると納得できてしまいます。
フィルムのどこにどんな編集を入れるのか、毒が上手く時間通りに回るように量を調整したら良いのか……ごく普通に生活していたアリス・ゴーモンが「犯罪のスペシャリスト」になれたのは、それらを指示していた犯罪コンサルタント・モリアーティがいたからなのではないでしょうか。

【レビュー&考察②】観客も舞台装置の1つ

本作はモリアーティが用意した舞台と人形たちの物語なのです。ショーを見る私たち観客もその舞台装置の1つにすぎない、という演出がたまりません。

本当のお客様は、ホームズとワトソンの2人です。だからラストは、最後の人形(犯人)の糸を切って、はいお終い。
このあっけない幕切れもなかなかにモリアーティらしい「お遊戯会」ではないでしょうか。

事件はどうやらここで起きているだけではないようです。この「呪われた薔薇の剣」事件以外にも次々とモリアーティの事件は起きているらしい。そのワクワク感を残す感じも、観客を現実世界に戻さずホームズの世界に引き留めているようで好きです。後処理はロンドン市警にでもやらせとけ、な扱いもホームズらしいのではないでしょうか。
あくまでも観客は主役ではなく、舞台装置。事件が突然起きて、突然現れた名探偵に解決され、放置される。シャーロック・ホームズに振り回される一般市民の気持ちに浸れます!!

【レビュー&考察③】物足りない?

「シャーロック・ホームズ」と聞いて、本格ミステリーを期待した方も多いでしょう。しかし、そこに期待して観ると少し物足りなく感じることでしょう。

ミステリー作品は
・事件が起きて
・調査して
・推理して(この時点で探偵は犯人の目星をつける)
・犯人に証拠を突き付ける

といった感じで、大まかに4パートに分かれて物語が進むことが予想できます。
しかし、本作は「犯人に証拠を突き付ける」最後のパートだけになっているのです。
そもそも事件は以前から連続的に起こっており、ホームズたちはすでに調査を開始していました。なので、ホームズがもう目星を付けた状態から本作が始まっていました
私たち観客からしたら今始まった事件ですが、ホームズからしたらもう「答え合わせ」の時間に入っていたのです。
本作は「犯人の最後の犯行現場」が舞台。なので、ここを「物足りない」と感じるかもしれません。しかし、あくまでも本作はUSJのアトラクションの1つにすぎないので、仕方ない部分なのではないでしょうか。

【レビュー&考察④】配役

私が観た日のキャスト(グループ)はおそらく2種類。「ホームズ&(年下・同年代)ワトソン」「ホームズ&(年上)ワトソン」の2バージョンです。ストーリーはどの公演も同じで変更はありませんが、キャスト陣によって微妙にキャラクターのニュアンスが変わっています。

ワトソン年下・同い年ver.
ホームズ:無邪気に事件に挑んでいる。事件にわくわくしているようなので、少し無神経な探偵。ワトソンへの無茶ぶりは楽しんでいるようにも見える。人を責めるのに躊躇がないので、寄り添おうとせず犯人を正論でさらに追い込む。
ワトソン:臆病でホームズに振り回されっぱなし。とにかく優しい人間
ワトソン年上ver.
ホームズ:推理に夢中。……なのでそれ以外のこと、人間に無関心。犯人の独白を聞いても感情的にならず、冷静にまとめる。ワトソンへの無茶ぶりは、ワトソンを信用しているからのよう。
ワトソン:頭が良く自分でも推理をしようとする。さすが戦場から戻った軍医、どんな状況でも肝が据わっている。とにかく慈悲深い。

同じストーリーでも役者が違うと、だいぶ彼らの印象が変わってきます。役者によってセリフ回しが変わっているのも面白いです。
これだけ印象が変わるのに、どちらも「ホームズ&ワトソン」になっているのもすごいです!ぜひ両方観て欲しいです!
他にも違うキャストやグループもあるかもしれないので、ぜひ注目してみてください。

オススメの観客席

※本編中に注目される席ではありません

上手の最前列(さらに言うなら、舞台の中央に近い方)がオススメ!
本作が開演する直前、記者役の方々が前方で少しわちゃわちゃする演技を観られて面白いです。
本編中、物語のほとんどは舞台上手で起こっています。最初の記者からのインタビューのくだり、死ぬシーン、犯人の登場なども上手側が多いです。
「上映中のサイレント映画に合わせて、それを観ている役者が苦しむ」連動しているシーンは綺麗に両方を観ることができます。まるで映画のワンシーンを観ているかのような完璧な構図で本作を観られるのが、この上手最前列!

ただし、メイド役を演じて呪いを信じたベラ・フランクの回想シーン、ワトソンが死体を運ぶ一幕、毒ガスを止める場面は少し観えにくいです。
また、最前列はスピーカーからの音だけではなく、キャスト陣の生声もよく聞こえます。なので音による仕かけや演出は、客席後方に座った方が楽しめます。

ステージ全体を楽しむために後方に座るか、臨場感や役者の演出を楽しむために前方に座るか……ショーのどこを楽しみたいかで、席を決めてみてはいかがでしょう?

まとめ

確かに賛否両論あるだろうな、というストーリーやキャラクターになっていましたが、私は楽しめました!「ホームズ」のミステリーを観ることができるというよりも、ホームズに振り回される一般人になることができるのです!
そんな体験型アトラクション。また観る機会がある方はぜひ……!!

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