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2013年卵巣嚢腫入院記:その7  観るより聴くもの

 この話は、2013年に卵巣嚢腫で入院した時の、私の簡単なメモと記憶を頼りの話なので、医学的な正確性を保証するものではありません。色々な事情で細部を変えていたりぼかしたりしていたりもします。単なる曖昧な体験記と割り切ってください。

前回までのあらすじ
 酸素マスクをぎゅうぎゅうに締められて窒息しそうになったけど手術は無事に終わったよ。痛み止めの副作用で吐き気がすごかったよ。


 手術の後はずっと寝てて、吐き気に苦しんだものの、痛みはほとんどなく夜が明けました。
 翌日の朝も痛みらしい痛みはなかったので、痛み止めは予定されていた規定量を入れて終了しました。吐き気止めも入れてもらえたので眠ることもでき、意外と気分がよかったです。
 朝は採血をしただけで、あとはずっと寝てる状態でしたが、ちょっと重たい風邪をひいて寝てる……くらいの感覚です。

 点滴はそのままで、昼に尿道カテーテルを外し、出すものを出すのは自力でやることに。歩くのは、多少ふらふらしたもののスムーズにいきました。この点でも「重たい風邪」くらいの感覚です。排尿はごく普通にできましたが、おなかに力が入らないこともあり、お通じはなかったです。
 そして、もうこの日のお昼から、食事が出ました。さすがにお粥メインですが、ちゃんとした食事です。手術したといっても消化器系ではないし、術式も内視鏡なので、その辺はさくさくと復帰させていくようです。食欲旺盛とまではいかないものの、やはり美味しく感じました。
 食事の後に排尿が確認されたので、栄養点滴も外されました。もう体には管がなく、身一つの状態。こうなるとだいぶ体を動かすのがラクになり、歩くのもスムーズにできます。重たい風邪だったのが、治ってきた辺り……くらいになりました。

★★★

 しかし、ここで思わぬことが起こった……というか、やはり元気ではないんだぞと体に思い知らされるような現象が起こりました。
 時間もあるし持ってきたDVDでも観賞しようと、手持ちのノートパソコンで再生して視聴してみたのですが、これが恐ろしく疲れるのです。何もしてないのに。DVD観てるだけなのに。
 45分のドラマの映像が終わるまでが、恐ろしく長く感じました。あの吐き気に苦しんだ夜のナースコールみたいです。あの時と違って苦痛はないのですが、とにかく疲れる。自分の中の体力ゲージが、もりっもりっと目に見えるスピードで下がっていくのがわかります。普段なら2本続けて観るドラマを1本観ただけで、クタクタになって横にならないと持ちません。

 恐らく、体力ゲージの全体量自体もいつもより短く、また1行動あたりに消耗する体力量も多いのでしょう。普段なら「100体力のうち2消費」くらいの行動が、「10体力のうち3消費」くらいの感覚。いつもは「全体の2%消費して98残ってます」なのが、「全体の30%消費して7しか残ってません……」みたいな結果に。
 しかしそれだけでなく、どうも「目を使う」という行為自体が、自分で想像しているよりも遥かにエネルギーを必要とするようです。本を読むのもものすごく疲れました。体を起こしているせいかなぁと思ったのですが、それよりも視覚情報の処理が必要とするエネルギーが莫大なことのウェイトが大きいようです。

 なので、結局DVDや本より、iPhoneでラジオや音楽や録音したものを聴く方が気分がよかったです。病中病後は、耳経由の娯楽の方がなじみやすいなと実感しました。私の入院の時は使いませんでしたが、同じ読書ならオーディオブックの方が疲れないのかも知れません。

★★★

 観たドラマがミステリーで、しかもよりにもよって被害者が腹部を刺されて死ぬという、腹空鏡手術の後に一番観てはいけないタイプのコンテンツだったことを、ここで告白します。手術後にミステリーダメゼッタイ。

★★★

 そんなこんなで七転八倒していたら夜になり、食事の後にバイタルチェックです。
 検温したら、なんと熱が38.6度まで上がっていました。普段の風邪なら相当だるくなる体温です。しかし、実はまっっったくと言っていいほど発熱している感覚がなく、だるさもわかりませんでした。体温計を見て「うお」とつぶやいたくらいです。
 どうも手術の後に発熱するというのは一般的な症状のようで、「心配いりませんよ」とのことでした。しかし熱が出たという事実よりも、熱が出ているのが全く感覚としてわからないことの方が驚きでした。

教訓 入院中は、目で見る娯楽よりも耳から入る娯楽を用意した方がいいぞ。でもミステリーはやめとけ。あと熱が出てもわからない。

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