見出し画像

2013年卵巣嚢腫入院記:その1 定期検診は受けておけ

 私は、過去に一度だけ、入院と手術を経験したことがあります。2013年なので、まだ「一昔」にはならないギリギリの昔です。

 まあ今の日本に、ある程度経済的に安定した状態で住んでいたら、何やかんやで病院につながって診断を受けて病気の治療にあたることになるでしょうから、一生に一回も手術しないで生涯を全うする人の方が珍しいかも知れません。

 経験したのは卵巣嚢腫と子宮筋腫という病気で、症状は全然なく、ほんとにひょんなことから発見されて治療を受けて回復しました。
 プレコロナ時代の話ですし、今とは事情が異なることもたくさんあると思いますが、せっかくなのでその時のことを覚え書きのように書いておきます。

 当たり前ですが、以下の話は私の簡単なメモと記憶を頼りの話なので、医学的な正確性を保証するものではありません。色々な事情で細部を変えていたりぼかしたりしていたりもします。単なる曖昧な体験記と割り切ってください。

  *         *

 もともと、つれあいの会社の健康保険で家族も健康診断が受けられるようになっていたので、子宮頚部がん検診のための検体採取に、近所の大きな産婦人科病院に行ったのです。
 検体採取は滞りなく、さっくりと終わったのですが、その時に「子宮筋腫があるよ」とだけ言われまして。
「え……? え?」と目をぱちくりする私。年齢的に、筋腫ができること自体は想定の範囲ではあったのですが。
 でもその筋腫をどうすればいいのか、ほっといていいのか、なんかやらないといけないのか。全然何の自覚症状や不都合もないんだけど、「あるよ」だけではさっぱりわからない。

「どうすればいいんでしょう?」
「書いておきますね」
 終わり。

 いや、その。結果に書かれても。再検査とか必要なんですか。どうなんですか。
 しかし病院とは忙しいところ。しかもこれはただの健康診断のための流れ検体採取作業。自分としては「どうすればいいのか」を訊いたつもりだったのですが、それが伝わらなかったのか無視されたのか、具体的なことを言ってはいけない理由があるのか(何か法律や契約的なもので「検体採取時に具体的な治療の示唆をしてはならない」とか縛りがあるとか)、まぁいずれにせよ結局その場はうやむやのまま訳もわからず終了でした。

 その後、実際の健康診断の内診で相談してみたところ、「一応精密検査をしてはどうですか」という、当たり前と言えばあまりに当たり前のアドバイスをいただきました。
 さすがに、検体採取に行った病院はちょっと気まずい……というか、もともとかなり大規模な部類に入る病院なので、相談するのに気後れしそうで、もう少し規模が小さいものの子宮ガン検診をやっている別の婦人科病院へ行くことにしました。

 その病院に行ったのは初めてでしたが、人気のようで待合室はぎゅうぎゅう。
 内診の後、超音波検診です。
 そこで、「子宮筋腫は経過観察でよさそうですけど、卵巣嚢腫がありますね」と診断を受けました。
 完全ノーマークの宣言に、またもや目がぱちくり。
 子宮筋腫はひどい自覚症状がないのなら特に慌ててどうこうしなくてもいい、とは色々な情報から聞いていましたが、卵巣のことは全然知らない。「腫瘍」ですから、嫌な想像が一気に脳裏を駆け巡ります。

 超音波検診の後の再度の内診で、改めて説明です。二つあるうちの左側の卵巣に腫瘍があること。「腫瘍」といっても別に悪性と決まっている訳ではないが、かなり大きい(8cm)こと。
「定期的に検診を受けた方がいいですか?」
「いえ、手術で摘出が必要です。摘出の目安は6cmと言われていますが、これは8cmありますから」
 え。
 手術。切除。ですか。

 その言葉は、カーンという感じで私の頭を殴った後、じわじわと脳裏に広がっていく感じでした。
 手術もそもそも入院も未経験、でしたので。出産予定はないとはいえ、卵巣を取る、というのもさすがにぞくっとしました。その後の説明で、卵巣は二つあるので片方なら切除しても月経等は来ますし、生活は変わらないということで、ちょっと気楽になりました。
(まぁ先に書いておきますと、その後の診断で、今回の私のケースでは卵巣自体を切除しなくても大丈夫と判明し、卵巣は残ったのですけどね)

 その日は、腫瘍マーカーを見る血液検査のための採血をして終了。
 腫瘍マーカーの結果が出るまでの数日間は、ちょっとしんどいものでした。大丈夫だろうという気分が九割ぐらいでしたが、ふとした拍子に「もしも悪性の何かだったら」という思考がよぎると……さーっと視界に半透明フィルムの幕がかかる。現実感を失うような。あるいは妙にまぶしいような。
 死ぬのかもなぁ、という感覚が、リアリティを持ってすとんと自分の中に落ちてくるのは、今までにない体験でした。

 後日、血液検査結果では悪性の可能性は非常に低いとわかりましたが、それでも大きさが大きさなので手術を検討しましょうということで、ある大学病院に紹介状を出してもらうことになりました。
 続きはまた改めて。

教訓その1:健康診断はやっぱり受けた方がいい。で、気になる結果が出たら、放置しないで改めて診てもらった方がいい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?