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2013年卵巣嚢腫入院記:その2 お金は多めに 

 この話は、2013年に卵巣嚢腫で入院した時の、私の簡単なメモと記憶を頼りの話なので、医学的な正確性を保証するものではありません。色々な事情で細部を変えていたりぼかしたりしていたりもします。単なる曖昧な体験記と割り切ってください。

前回までのあらすじ
 健康診断で子宮筋腫が見つかったので、精密検査をしてもらったら、子宮筋腫よりもすぐに対応が必要な卵巣嚢腫が見つかったよ。


 という訳で、紹介状を出していただいた大学病院で診察となりました。

 卵巣嚢腫を見つけてくれた病院は女性の先生でしたが、こちらの担当の先生は男性でした。
 以前、精神科医の中井久夫さんのエッセイで、「自分が手術のために入院した時、普段は頼りない研修医がとても立派な人に見え、看護師の女性がみな非常な美人に見えた。病気が治っていくと、普段の人物像の見え方に戻っていった。病気の時の人間の感じ方はそれほどまでに変わる」みたいな話を読んだことがあります。
 この効果か否か、なるほど担当の先生は大変にさわやかなイケメンに見えました。

 ちなみに、婦人科の病気で、かっこいい男性の医師に診てもらうなんて(照)……みたいな感覚は、私の場合は全然ありません。その辺は人によるとは思いますが、少なくとも私は、そういう方向性につながりそうな感情のスイッチは、病院にいる間は全部完全に切れてる感じです。

 もう一度ここで経過を私から説明。その上で内診と超音波検査を改めて行い、「やはりこれは手術が必要であろう」という結論となりました。二人の先生の意見が揃ったということで、信頼性は高かったと言えるでしょうか。

 今回の私の「卵巣嚢腫」というもの。
 いくつか種類があるそうですが、私のケースのものは、ざっくり言うと、卵巣の中に卵巣にあるはずのない組織が溜まっていくもののようです。
 中に溜まっていく組織というのは、これと決まっているものはなくて、液体が多いようですが、髪の毛や歯ができてることもあるとか。何でそこに歯が入ってるんだ……人体の神秘にも程があるのではと神様にクレームしたい。

 ちなみにかのブラックジャック先生の助手のピノ子ちゃんは、この卵巣嚢腫から取り出した人間一人分の組織から作られたという設定になっているそうです。あ、もちろん全力でフィクションなんで、普通そんな一人分の組織とか溜まりませんので念のため。

 この卵巣嚢腫は、多くの場合自覚症状は全くなく、妊娠検査やガン検診で見つかることが大半だそうです。
 悪性でなければ、それ自体大きなトラブルという訳ではないのですが、この嚢腫の根元がねじれたりすると、激痛・嘔吐・出血・意識不明などの大事になることがあり、放置すると卵巣に血液がいかなくなってしまうので緊急手術になってしまうこともあるとか。大きいとこの可能性が高くなるので、私のように大きいケースでは摘出しましょうという話になるようです。
 ちなみに、この病気、原因はよくわからないそうです。
 なので「再発の心配はどれくらいありますか?」と訊きましたが、「全くない訳ではない、くらいのこと」という感じの返答でした。特にこうしたら再発が防げるとか、そういうこともわからないとか。
 まあ人体の運営で、ちょいちょい起こるコピーミスみたいなものなんでしょうね。

★★★

 この時には、まぁ悪性の可能性はそんなに高くはないだろうということで、手術といっても大分気が楽で、この際だから未知の体験をよく記憶しておこうという気分になっておりました。

 手術のために、腫瘍の状態をよりきちんと確認する必要があるため、MRI撮影をすることに。で、どういう事情か、その大学病院ではなくて別の外部機関に行って撮影してくれと言われたので。恐らく病院内のMRIは、入院患者さんや緊急の患者さんの分でいっぱいだったんでしょうね。

私「費用いくらいくらいかかります?」
イケメン医師「たぶん1万円以内じゃないかと思います」
 という訳で財布に1万円入ってるのを確認してレッツゴー。

 外部機関は、大きなターミナル駅複数に撮影施設を揃えているところでした。こういう、検査を専門に行う施設というのがあるのですね。無知な私はこの時初めて知りました。とりあえず自宅から一番近い施設の予約を入れて、いったん帰宅です。
 ……帰宅したのですが、ほどなく電話がかかってきて、「申し訳ありませんが、施設の機械が故障しまして、撮影ができません。別の場所に振り替えてもらえますか」という連絡が。こんなこともあるのですねぇ、無知な私はこの時初めて知りました(リフレイン)。
 結局鉄道を乗り継いでちょっと遠いターミナル駅へ。駅から徒歩1分、というかもう目の前のビルの中。雑居ビルで、そんな医療施設があるようには全然見えないのですが、入ってみると綺麗に貼られた床が「ここは清潔な医療施設ですっ」という主張をしておりました。

 MRIは、皆様ご存知、体の中の水素分子をあーだーこーだして撮影するものです。
 今回は造影剤を入れての撮影がイケメン主治医から指示されています。この造影剤は、まれにアレルギーが起こって危険な事態が起こるので、事前の説明と同意が必要になります。
 という訳で、改めてここで、何で私がここでMRIを撮ってもらう顛末になったのかを、施設の担当者に説明。これで3回目です。どんどん説明がこなれていくのが自分でもわかります。と言うか、カルテみたいなものは回ってないのか。何でおんなじ説明を何度もせねばならないのか。何かこれも意味があるのか。医療の謎です。

 こちらの説明の後、先方のMRIの手順と造影剤の説明のターン。
 造影剤の説明、と言っても、要は危険性についてです。
 ざっくり言えば「10万人にひとりはアレルギーで死ぬけどOK?」と言われます。ぜんぜんOKじゃないだろ、と思ったあなた、それはたぶん私の要約がざっくりすぎるための誤解です。たぶん。
 まぁ、当たり前ながら造影剤を入れることにより血流などがよりはっきり写り、嚢腫の様子がわかるからこそやる訳で、ただただ無意味に十万分の一のロシアンルーレットをやる訳ではありません。
 またこのアレルギーは色々な既往症によって発生率の上下があるようなので、私の場合危険性はもっと低く、まず大丈夫でしょう、というまじめな説明を経まして、造影剤を入れてMRI撮影となりました。

 術衣に着替えて、造影剤は確か点滴で入れたような気がしますが覚えていません。
 MRIはいかにもSFチックです。指定の場所に行くと、ヘッドホンをするように指示がありましたので従うと、音楽が流れておりました。選曲は坂本龍一の「Energy Flow」。心落ち着かせる癒し系ということでしょうか。
 が、そんな癒し系も、MRIが動作し始めるとものすごい機械の騒音で全く聴こえなくなる訳です。ウィーンウィーンガシャーン、としか言い様のない騒音で、機械が好きな人には楽しいと思います。ヘッドホンは音楽どうこうより、耳栓として装着してるんじゃなかろうか。
 MRI内部は狭いので、閉所恐怖症の人はたまに発作が起きるそうですが、私の場合は何事もなく終了。

 終わって着替えて、さあ会計となりましたら、受け付けのおねえさんに笑顔で「3万弱です」と宣告されました。
 おおおおおい、イケメン先生ーーーー、「たぶん1万円以内だと思います」とか言ってたじゃないですかーーーーー、話がずいぶん違うんですけどーーーー!? なぜこんな食い違いが起こったのか、未だに謎です。
 とりあえずクレジットカードが使えるところだったので、それで支払いを済ませて事無きを得ました。人生初のMRI体験を噛みしめつつ、帰宅です。


教訓その2:お金は多めに持ってた方がいい。あとクレジットカード重要。

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