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フランク・シナトラ「シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ」

人生に欠かせないオールタイムベストな音楽アルバムをいろいろと紹介していきたいと思います。ジャズ、クラシック、ロック、ポップス、歌謡曲、フォーク、J-Popなど、脈絡なくいろいろと。


お宅のリビング・ルームを一瞬にしてラスベガスに変えるもの。

それはブラックジャックでもルーレットでもありません。マジックショウや煌びやかなネオンサインでもありません。

ただこのCDをCDプレーヤーのトレイに載せるだけ。
もしくはLPをターンテーブルに載せるだけ。
はたまた音楽配信で探して再生してみるだけ(これはちょっと趣に欠けるけど)。

そう、このアルバムは古き良きラスベガスのショウの雰囲気を(ボクが知る限り)もっとも伝える名作なのです。


ライブの名盤はいろいろあります。
でもこの「シナトラ・アット・ザ・サンズ」がそれらと一線を画すのは、もちろんフランク・シナトラ & カウント・ベイシー・オーケストラ & クインシー・ジョーンズという豪華ラインナップ(すげー!)による名演もありますが、なによりシナトラのしゃべりをそのまま収録しているところ。

これがまた長々しゃべるんですよ。
で、観客は笑いっぱなし。腹抱えて笑っているのが目に浮かぶような大笑いの連続で、それをカットせずそのまま収録したことにより他のライブアルバムでは感じられないような臨場感と楽しさが出ています。

シナトラは語りの名手。明るすぎるほど明るくしゃべくりまくるのですが、とても早口なのではっきり言って英語が不得意なボクは聞き取れません。だけど楽しさは伝わってくるんですよね。にこにこしてしまいます。

※(ボクが買ったCDには、そのしゃべりを完璧に英語で書き取った冊子が入っているのだけど、ネット上でざっと調べた限りでは他では手に入らなそうですね)
※※この語りの背景として、サミー・デイヴィスJr.やディーン・マーティンたちとの「シナトラ一家(Rat Pack)」のことを知ってるとより楽しめます。サミー・デイヴィスJr.やディーン・マーティンのCDもとてもいいのがたくさんあります。
※※※このアルバムをリリースした1966年に、彼はあのミア・ファローと結婚しています。幸せの絶頂だった感じもありますね。2年後に離婚しちゃうんですが。
余談だけど、ミア・ファローの結婚歴は凄すぎます。フランク・シナトラ→アンドレ・プレヴィン→ウディ・アレン。驚愕のラインナップ。そのうち彼女主演の「フォロー・ミー」も「オールタイムベスト映画」で取り上げようと思っています。


楽しいのはしゃべくりだけではありません。
歌も実に楽しげ。

フランク・シナトラのアルバムは名盤がいっぱいあるんですが(「イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ」とか大好き)、彼はライブの方が歌がうまいと思うんですよね。

どうもスタジオにこもって歌うのが彼は性に合わなかったんではないかと思います。スタジオ録音とライブ録音を比べると「楽しさ」が全然違う。

客を前にして歌っている彼は、声に張りがあってイキイキしています。サービス精神が内から溢れ出て、もうなんとか楽しませたいと躍起になっている感じ。根っからのエンターティナーなんでしょう。

それに比べるとスタジオ録音のものは、声に孤独感が強くでていて痛々しくなってしまうことがあるくらいです。彼は、ライブで癒されていたのではないかな。


まぁとにかく聴いてみてください。
明るいシナトラの本領発揮。
バックのカウントベイシー楽団の演奏も素晴らしいし、クインシー・ジョーンズの編曲・指揮も素晴らしい。
これぞスイング。これぞライブ。これぞエンターティナー!

ボクが特に好きなのは7曲目の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」。
手垢が付きまくったスタンダードですが、彼がノッて歌うとまるで別の曲のように魅力的に変わるんですね。


ボクがこのCDを初めて聴いたのは1990年ころだったか。

その頃はまだシナトラは健在でした。
同時代に生きている同士として身近に聴けて、本当に良かったと思います。

いまの若い人たちからしたら、「え〜、生きてるシナトラ知ってるの?!」なんてうらやましがられるかもしれません(そんなことないかw)。JFKと同じ時代を生きた人がそれを誇りにするように、ボクも彼を誇りにします。

え?
シナトラなんて名前、聞いたこともない?

後悔させません。ぜひ聴きましょう。

いろいろなアルバムも出てますが、カウント・ベイシーの演奏が冴え渡った(そしてクインシー・ジョーンズのアレンジも指揮も冴え渡った)このアルバムも、ぜひ聴いてみてくださいね。

きっと、他のシナトラも聴いてみたくなると思いますし、あ〜こんな大人なショウが世の中にはあったんだなぁ、って、嘆息つくこと必至です。


古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。