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「私が我が運命の支配者  私が我が魂の指揮官」

明日の言葉(その19)
いままで生きてきて、自分の刺激としたり糧としたりしてきた言葉があります。それを少しずつ紹介していきます。


クリント・イーストウッドがネルソン・マンデラを描いた映画『インビクタス』の中で、マンデラが繰り返し繰り返しつぶやく言葉がある。

 私が我が運命の支配者
 私が我が魂の指揮官


これはウイリアム・アーネスト・ヘンリーの以下の詩の一部である。

マンデラは27年間の投獄中(27年!)、この詩を心の支えとしたという。


インビクタス -負けざる者たち-

 私を覆う漆黒の闇
 鉄格子にひそむ奈落の闇
 私は あらゆる神に感謝する
 我が魂が征服されぬことを

 無惨な状況においてさえ
 私は ひるみも叫びもしなかった
 運命に打ちのめされ 血を流しても
 決して屈服しない

 激しい怒りと涙の彼方に
 恐ろしい死が浮かび上がる
 だが 長きにわたる 脅しを受けてなお
 私は何ひとつ 恐れはしない

 門が いかに狭かろうと
 いかなる罰に苦しめられようと
 私が我が運命の支配者
 私が我が魂の指揮官



INVICTUS

 Out of the night that covers me,
 black as the pit from pole to pole,
 I thank whatever Gods may be
 for my unconquerable soul.

 In the fell clutch of circumstance
 I have not winced nor cried aloud.
 Under the bludgeonings of chance
 my head is bloody, but unbowed. 

 Beyond this place of wrath and tears
 looms but the horror of the shade,
 and yet the menace of the years
 finds and shall find me unafraid.

 It matters not how strait the gate,
 how charged with punishments the scroll,
 I am the master of my fate:
 I am the captain of my soul.



映画『インビクタス』はこんなストーリーだ。
アマゾンの紹介をコピーしてみる。

アパルトヘイトによる27年間もの投獄の後、黒人初の南アフリカ共和国大統領となったネルソン・マンデラは、依然として人種差別や経済格差が残っていることを痛感する。
誰もが親しめるスポーツを通して、人々を団結させられると信じたマンデラは、南アフリカのラグビーチームの立て直し図る。
マンデラの”不屈の精神”はチームを鼓舞し、団結させ、奇跡の快進撃を呼び起こす。
それは、暴力と混沌の時代に初めて黒人と白人が一体となった瞬間だった。


そう。
この映画のハイライトはラグビーのワールドカップ。

「暴力と混沌の時代に初めて黒人と白人が一体となった瞬間」なのだ。

そこに、この詩の内容がかぶり、深い感動を呼び起こす。



今年のラグビーワールドカップ日本大会。
南アフリカ共和国は、初の黒人キャプテンを選出した。


リンク切れするとイヤなので抄録すると、

南アフリカは長く人種差別問題を抱え、かつてラグビーは「白人のスポーツ」とされていた。チームを引っ張るフランカーのシヤ・コリシ(28)は、同国代表初となる黒人の主将だ。
アパルトヘイトに伴う制裁が解除され、南アが初めてW杯に出場したのは95年の第3回大会だった。自国開催の舞台で、チームは「One Team, One Country(一つのチーム、一つの国)」というスローガンを掲げて初優勝を果たした。当時10歳だったフランカーのフランソワ・ロー(34)は「国全体がラグビーを通じて一つになった。国の歴史にとってとても大事な瞬間だった」。クリント・イーストウッド監督が映画化した「インビクタス」でも知られる大会だ。


これが南アの歴史とってどのくらい事件で、どのくらい意義深いことなのか。ネルソン・マンデラが生きていたらどういう感慨を持つものなのか。

ボクは当事者ではないのでわからない。

でも、それは、幾多の南ア人たちが、鉄格子にひそむ闇に怯え、無惨な状況におかれ、運命に打ちのめされ 血を流し、激しい怒りと涙の彼方の死をみつめ、罰に苦しめられた末に、狭き門を抜けて辿り着いた現実だ。

 門が いかに狭かろうと
 いかなる罰に苦しめられようと

 私が我が運命の支配者
 私が我が魂の指揮官


南アの、あの「不屈」なラグビーには、「負けざる者たち」のスピリッツが受け継がれているのだろう。

チームとしてはそんなに好きではないのだけど、でも、南アのラグビーを観るとき、この言葉を思い出してふと涙が流れることがある。


個人的に、この言葉をある時期とても頼りにしていた。

何度も何度も反芻し、挫けそうになる自分を叱咤激励し続けた(震災支援後のトラブルで、その言葉のもつそのままの意味で「死にそう」になった頃の話しだけど)(もちろんマンデラほどの苦しみではなかったのだけど、漆黒の闇には落ちた)。

そして、なんとか征服されなかった。

 私は あらゆる神に感謝する
 我が魂が征服されぬことを

あの頃のことを思い出すと今でもヒヤヒヤしはするけれど、負けざる者でいられたことを誇りに思っている。

それは、ほとんど、この言葉のおかげだ。

 私が我が運命の支配者
 私が我が魂の指揮官



ネルソン・マンデラの「不屈」を心に刻みながら、明日もまた一歩、前に進もうと思う。





まさに本日、ラグビーワールドカップ2019日本大会の決勝が行われる。

イングランド vs 南アフリカ

南アは、前回の2015年イングランド大会で日本に歴史的な敗戦をした。
そして今大会では初のベスト8に進出した日本を破って勝ち上がった。

イングランドは、日本を別チームと思えるほど強くした功労者エディー・ジョーンズが率いる。

どちらも日本に縁が深いチームである。

ただ、ボクは、イギリス4ヵ国をわりと愛している。
自分の新婚旅行先に選び、24日間もかけて巡ったのだ(だからイングランドもウェールズもスコットランドもアイルランドも大好きだ)。

そういうこともあって、気持ち的には、イングランド応援だが、南アの歴史と、初の黒人主将と、映画『インビクタス』のことを思うと、どうしても南アに肩入れしたくなる。

というか、両方を応援しよう。
テレビの前で正坐しながら観戦する。

あと5時間後にはキックオフ。
すでに、少し、震えている。


古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。