【詩】ひとりうつむく

幾千億もの頁がささやく
書庫の影で
煌々と照らされた壇上で
机上の掌の中で
正義の手本は此処に在りと

あなたはひとりうつむく
言葉もなく

トタン屋根から手を振ろう
立派な理論を着せられた
万能感の奴隷たちに

金脈の上に
奪う者と奪われる者の
腹の音が響き渡るから

破裂した胸を見つめながら
服を脱いで踊っていよう


煙幕に満ちた道端で
わたしたちは頁を捲る
崩壊は音を立てるものと
ほがらかな期待を乗せながら


航路に迷い
帆を下ろした神話は
太陽と月と呼ばれた星の
近くも遠い狭間に落ちて

いまは武器商人の財布に
宿っている

あなたから溢れ出す澄んだ海は
わたしの両手にありあまる

皮膚に刻まれた歴史を
なぞらえる指先は赤く濡れ
わたしは運命の道筋を探す


あなたをただの人だと
誰もが云い、あなたも云う

ただのひと以外に
成るべきもなれるべくも
ないというのに

表通りで誰かが歌う

あなたはひとり、部屋でうつむく
呟くように
恥じ入るように

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