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恋に落ちてダンス

「かとうかず子」の番組の話をさらに続ける。
この記事から読むという人のために、簡単にこの番組について紹介すると、あの女優「かとうかず子」が映画音楽を特集する番組のパーソナリティをやっていた時代があった。おそらくは1980年代後半。FM東京の番組で、夜の11時からやっていた(はずである)。

この番組でほんとに多くの映画音楽に出会った。出会うことで一生、聴き続けることになる音楽になったものもある。今回は、そんな多くの出会いからの一曲。

その前に。

前の記事でも触れた中学生時代。私は、クラオタだった。そもそもラジオに熱中していたのは、クラッシック音楽をエアチェック(お、死語!)するためだった。毎週FMステーションというラジオ番組表が掲載されている雑誌を買い、クラシック音楽で聞いたことのない曲を探し出し、聞いた。そのうちにタイマーを自作して録音までするようになった(この話はまた今度)。とにかく当時は、クラッシック音楽以外にはまったく興味はなかった。

そんな私を変えたのが映画音楽である。否、”サントラ盤”との出会いである。

サントラ盤には、当時、アメリカでヒットチャートを賑わすアーティストの曲が入っているのが当たり前で、例えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のサントラには、あの見事なオーケストレーションのテーマ音楽だけでなく、当時人気のあったヒューイ・アンド・ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラブ」が収録されてる。サントラ盤を聴いていれば、自然と流行りのロックを耳にするようになり、そのうちにアメリカのヒット・チャートが気になり始めて、知らない間に毎週欠かさずベスト・ヒットUSAを観るようになっていくのだ。

ともあれ、自然にロックを聴くようになるというのは、映画と音楽の絶妙なマッチングがあるからだ。

そんな絶妙なマッチングということで言えば、『ホワイト・ナイツ』の挿入歌、ライオネル・リッチーの「セイ・ユー・セイ・ミー」(この曲でライオネル・リッチーを知ることになる)だったり、ベスト・キッドの「グローリー・オブ・ラブ」だったりと。映画が良ければ、曲もよく聴こえる。

さて、また話が脱線気味なので、本線にもどそう。

当時「かとうかず子」の番組のおかげで出会えた映画音楽がある。その曲が、デイブ・グルーシンの「マウンテン・ダンス」である。

この曲は、1984年公開の映画『恋におちて』の劇中音楽である。映画『恋に落ちて』は、ロバート・デニーロとメリル・ストリープ共演で話題となった作品である。通勤電車で出会った中年の男女の恋物語だ。

曲は、この走る電車のシーンで使われる。その爽やかな疾走感が二人の恋の淡さや純粋さを表現していてとてもマッチしている。とくに、イントロ部分のリズムを刻むピアノが期待感を掻き立て、その後、ベースがリズムを刻み始めると、ようやくピアノがメロディーを奏ではじめるという具合だ。その変化がまるで電車が走り始め、徐々にスピードをあげて、都会を抜けていく感じに聴こえてくる。

この曲は、単に映画音楽としての魅力だけでなく、曲としての魅力をじゅうぶんに持っている。正直に言うと、デイブ・グルーシンは、この曲を作ったというだけで名前が残ってもいい。

さて、このデイブ・グルーシンという人だが、出自はジャズ・ミュージシャンらしい。私が最初に彼の名前を知ったのは、映画『グーニーズ』のサントラ盤でである。このサントラは、ご存知、シンディ・ローパーの曲ではじまる名盤である。グルーシン作曲のエンディング・テーマもじつに印象的な曲である。かとうかず子の番組では、このエンディング・テーマと「マウンテン・ダンス」を紹介していた。

以来、いまでも時々この曲をかける。映画は、ずいぶん後になってみたが、そこでこの曲の新たな魅力も発見した。流れる車窓の風景に添えられた曲は、より印象的だった。


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