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経営者のためのAI&CS講座 3:NVIDIAって何の会社?なんであんなに強いの?

最近何かと話題のNVIDIA。GPUの会社ですね。株価もうなぎのぼり。
でも何でGPUの会社があんなに利益出てるんだろう?と疑問に思ってる方も多いと思います。これからAIを学んでいく上で、NVIDIAの存在と、果たした役割はとても重要になりますので、AIの解説の前にNVIDIAについて少し経営者視点で解説します。

GPUとは

ウィキペディアにはこんな解説があります。

めちゃめちゃ端折って要約すると、

  • もともとはコンピュータのモニタに絵を表示するためだけの半導体だった。

  • 徐々に計算機能が付加されていき、光と影のシミュレーションだったり波のシミュレーションだったり、リアルタイムに絵が描けるようになった。主にゲームで利用された。

  • さらに計算機能が足され、スーパーコンピュータで行われるような科学技術計算もできるようになっていった。

  • 計算能力が増えていって、多くの応用事例が増えていく中で、AIの研究開発に使われるようになっていった。

  • ブロックチェーンのマイニングにもたっぷり使われています。

GPUの始まりが、コンピュータのモニタに絵を表示することだったので、画像1ピクセルごとに処理が必要でした。結果として、普通のインテルなどのCPUに比べ1チップに入っている演算装置の数が、何桁も違う構成になっています。様々な計算をする必要があるCPUに比べ、処理しなければならない計算の種類が限定されてるGPUは、演算装置の構成がシンプルで、同じサイズの半導体にとても多くの演算装置を載せることが可能です(こんな図が参考になります)。

NVIDIAの強さ

ここからはしばし個人的な意見になります。反論も多いかもしれませんがご了承ください。

CUDAが最強

現在、多くの企業がNVIDIAに続けと新しい半導体を開発しています。AIの学習用途半導体というマーケットにおいては、NVIDIAのシェアはなんと90%以上。需要に供給が追いつかず、ユーザからするとNVIDIAのGPUを買ってあげるというよりは、買わせて頂く、お願い買わせて!という状況が続いています。ハードウェア的に考えると他に選択肢がないわけじゃないのですが、ソフトウェア的に考えると、NVIDIA以外なかなか使いにくいという状況になってます。なぜか。
現在多くのGPUプログラムがNVIDIAが長年の月日と莫大なコストをかけて作ってきたCUDAというSDKの上で書かれています。「SDK」とは簡単にいうと、ハードウェアとプログラマーの架け橋となるソフトウェアです。SDKがないと99%のプログラマーは、新しいハードウェアが作られても何もできません。(このあたりは実際にプログラムを勉強しないと、ピンと来ないと思いますが、今は我慢してください。)
つまりプログラマーたちは、SDKを頼りにSDKに合わせた形でプログラムを作ります。現在多くのというより、ほとんど全てのAI関連のソフトウェアはCUDAの上に作られているため、新しい素晴らしい半導体を発明し作ったとしても、全てのAI関連のソフトウェアが全く動かない、動かすには全てソフトウェア書き直し!という事態になってしまうのです。少々大袈裟なのですが、まあ大枠は間違ってはいない事実です。
補足:細かくいうと現在のAI(特にDeep Learning)はCUDA(NVIDIA専用)よりさらにプログラマーに近い、PyTorch(オープンな技術)というソフトウェア上に構築されてることが多いので、新しい半導体はPyTorchをサポートできれば、それなりの数のAIソフトウェアが動きます。なので、シェア挽回するチャンスがないわけではないと思います。AMDをはじめ多くの企業が、PyTorchのサポートをして既存のAIアプリケーションが普通に動作するように頑張っています。

僕自身2006年か2007年ぐらいに、何回かNVIDIAのCEO Jensenに会ってミーティングしたことがあります。その時に、「ハードウェアエンジニアとソフトウェアエンジニアの比率はどのくらい?」と質問しました。ハードウェアの性能が大事でソフトウェアはおまけ的な発想が主流だった頃だと思いますが、回答は「ソフトウェアエンジニアが7割」でした。NVIDIAはハードウェアが有料で、ソフトウェアが無料というビジネスモデルであるにも関わらず、無料のソフトウェア開発に多大な投資をしてきた。その判断が今のNVIDIAの強さを作ってきたのだと思います。

マーケットを作る能力がすごい

現在AIは目覚ましい進化を遂げています。私たちの生活にもかなり入り込んできていますね。このAI革命を作ったのは多くのAI研究者たちなのは間違いないのですが、NVIDIAの進化と支援があってのことだと僕は思います。
フィックスターズも2006年ぐらいからGPUのプログラミングに取り組んできていますが、NVIDIAはターゲットとするアプリケーションを決めて、そのアプリケーションが起こすだろうイノベーションに必要な演算ができるGPUを絶えず作ろうとしてきているように思います。スーパーコンピューターで行われている計算をGPUで!というチャレンジをしたり、AIが必要な計算量をこなせるGPUを作ろうとしたりして、自社のテクノロジーを活かして新しい応用事例を作ろうと大学への研究支援だったり企業への研究支援だったりを絶えず行ってきています。今のAIがこんなにすごくなったのもNVIDIAの演算パワーがあったからなのは間違いありません。

まとめると、NVIDIAは長年培った技術をベースに、ユーザをベンダーロックできるようCUDAを洗練させ、プログラマーのファンを増やし、AIを実用的なレベルまで飛躍させて、今の強さを作ったと言えると思います。

現在NVIDIAの最新GPUは、1GPUあたり500万円を超える価格で売られていますが、注文しても納期は1年後だったりしています。。。GPU欲しい。そんな人が世界中にとてもたくさんいますので、、、NVIDIAの強さはしばらく続くと思います。ちなみに僕自身は2006年ごろからNVIDIAよく知ってたのに、株は全く持っていません。当時100万円買っておけば、今いくらなんだろう。。。買っておけばよかった(笑)。

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