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あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月

突然なに? キーボードの上を猫が歩いたの?

あなたは今、そんな風に思ったかもしれません。実はこれ、鎌倉時代の僧侶 明恵上人の歌なのです。

あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月

(明々や 明々明や 明々や 明々明々や 明々や月)

はじめてこの歌を目にした時、頭の中で「すげー!」と絶叫したことを覚えています。まっすぐな気持ちで「かっこいい!」と思ったんですね。古典とか和歌などというものは、学校の授業で習うような知識とか技法とか、そのようなものを覚えないと理解できない、と思っていたのですが、この歌は「すっ」と頭の中に飛び込んできたのです。

右脳でイメージを瞬時に捉える感じ、というのでしょうか。頭の中に、今までに見た「まっしろな月あかり」が、アルバムをめくる時のように次々に浮かんできました。どちらかというと、真っ直ぐに月を見上げている感じではなく、ひとりで夜釣りをしている時に水面に月明かりが落ちてくるような景色。いや、山奥のキャンプ場で「もしかして本も読めるんじゃないか」と、実際に本を広げてみた時のそれが近いだろうか。

そんなことを考えながら、和歌のすごみ、日本語の豊かさに、しみじみと感じ入ったのでした。

ちなみに、明恵上人は「釈尊に対する憧れや尊敬の思いから、右耳を切り落とす」ほど、厳しく道を追求された方です。そのような人生を送られた方が詠んだ歌、と思うと、この三十一文字に数万語の高みと広がりを感じられるような気がするわけです。


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