見出し画像

其の九【わたしと落語と】寄席文字

せっかく連載を続けているので、ネタになる何か新しいことをはじめようと思い立ったのが「寄席文字」である。今まで何度か挑戦しようと思って資料を集めたことはあったが、始めるきっかけがなかった。寄席文字とは昭和に橘右近さんが家元となってからの名称で、もとは江戸時代に寄席で使われた「ビラ字」がはじまりだという。文字を客席に見立ててなるべく隙間なく、並べて見た時に誰かが目立ちすぎたりしないようにすべてを太くはっきりと。

実際にお手本を見ながら練習してみると墨汁をたっぷり使って下書きの枠いっぱいに書くのが気持ちよく、筆先に集中できるのがなんとも楽しい。一度書いたあと、はらいを書き足したり線を整えたり、何度かやっているうちに「これはレタリングだな?」と考えが至った。デザインを学んだ者なら誰もが通ったことのあるレタリング。わたしはこれが大好きでかつ得意であり、学生時代にオリジナルの書体を作ったこともある(今の今まで完全に忘れていたが)。

パソコンなどで「フォント」が手軽に使えるようになり、手書き文字の機会は少なくなった。しかし、フォントは変形に弱いのだ。極端に長体や平体(縦・横に長くする)にしたい場合、文字を変形しただけでは筆致のバランスが崩れてしまう。手書きなら枠に合わせて調節できる。いわばオーダーメイド。寄席文字が長く愛される理由はここにあるのだな、と筆を運びながら思った。

Twitterにて連載している『わたしと落語と』のシリーズをテキストつきで掲載しています。Twitterは毎週水曜日の朝に更新しています。ぜひチェックしてみてくださいね!


寄席文字を学ぶにあたり、参考にした書籍を載せておきます。
絶版で手に入りにくいものもあるので、古書店や図書館などで探せるとよいかなと思います。
お手本にしやすいので電子書籍化してもらえると嬉しいのですが〜〜!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?