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国立奥多摩美術館館長の 他の美術館に行ってきた!(Vol.05)東京富士美術館 『山本作兵衛 展』

他の美術館に行ってきた!(Vol.05)

20220221_スキャンデータ他の美術館05

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東京富士美術館
『山本作兵衛 展』
会期:2022年2月11日~年3月13日
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2022年2月16日(水)曇り。
宗教法人の創価学会が母体となり運営されている
東京富士美術館に行ってきました。
宗教と美術については、またいつかどこかで書けたらなと思います。

今回は、コラムを読んで下さっている読者の方から、
展覧会のおすすめが届きました。
それが山本作兵衛さんの展覧会でした。

この作兵衛さんについては、数年前からずっと気になっていました。
ユネスコが、人類にとって重要な価値を持つ記憶物を
後世に残すために『世界記憶遺産』というプロジェクトを
行っていて、日本で初めてそれに登録されたのが、
この作兵衛さんの炭坑の記録画だったのです。
そんなニュースを耳にしていて、
いつかちゃんと見てみたいなと思っていました。

作兵衛さんは1895年福島県嘉穂郡の生まれ。
7、8歳頃から両親の手伝いで炭坑に入り、
その後の約50年間、炭坑夫として働いたそうです。
そして、そこで見聞きしたことを、
子や孫に残したいとの思いから60歳を超えた晩年、絵を描き始めました。

美術用語で、専門的な美術教育を受けていない人が、
個人的に沸き上がる衝動を糧に制作した作品を
「アールブリュット」といいます。
まさに作兵衛さんの絵は、伝えたい!と沸き上がる
衝動の産物のように思えました。
アールブリュットと共に思い出すのが
横山大観という絵描きの「画は人なり」という言葉です。
それが僕の中に、絵や作品を見る時の視座として鎮座しています。

絵はその人を表す。
いい絵を描きたければ、ただ絵の描き方だけを学ぶより、
日々の生活の中で、よく心を動かし、人として面白く生きること。
そうすれば自ずと絵も面白くなる。
いい絵は、描いた人のことが透けて見えてくる。
だから、いい絵を描くためには、まず、よく生きること。

僕なりの超訳ではありますが、そんな言葉を思うと、
作兵衛さんの絵からは、
まさしく、よく生きた作兵衛さん、その人が
透けて見えてくるような気がしました。
作兵衛さんと話をしているかのように、
ずっと見ていられる絵が並んでいました。

作兵衛さん、かなり真面目で几帳面で
丁寧な方だったのではないかとお見受けいたしました。
【☆9.0】(佐塚真啓)
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「西の風新聞」2022年3月3日(1640号)掲載


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【おまけ】
「西の風新聞」今週号の気になるニュース
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◉9面掲載◉
「車にひかれないように道路の横断を手助け」


春になると産卵するために池を目指して
道路を横断するカエルが現れる。
そして、車に轢かれてしまうカエルが多くいる。
そんな小さな命を守るため、
カエルの道路横断を手助けする
ボランティアグループが存在する。
その名も「カエルお助け隊」。

●その詳細は「西の風新聞」2022年3月3日(1640号)で!

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