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【冒険ショートショート】印西ジョーンズと伝説のお子様ランチ または、洞窟の奥はお子様ランチ

 冒険派考古学者として名高い日系アメリカ人、印西ジョーンズ博士は南米某国のジャングルで、洞窟の奥深くへと足を踏み入れた。

 ついに発見したのだ。
 この洞窟はポヤチャチャン戦士の神殿と呼ばれ、最奥部に黄金の戦士像が祀られているはずだった。

 印西博士は、この洞窟を捜索中に行方不明となった仲間から短いメッセージを受け取っていた。

「洞窟の奥はお子様ランチ」

 これは黄金像をめぐる罠を示すものと思われたが、具体的にどんな脅威なのかはっきりしないままだった。

 洞窟最奥部に辿り着いた印西博士は、台座の上に載ったメロン大の黄金像を慎重に観察した。
 恐らく台座からこの像を持ち上げるだけで罠が発動するに違いない。
 博士は像と同じ重さになるよう砂をつめた皮袋を用意し、像を持ち上げた瞬間、入れ違いに台座に載せた。
 はじめはうまくいったかに見えたが、すぐに鈍い振動が洞窟全体を揺らし出した。

「!」

 博士は洞窟の入り口に向かってダッシュした。
 次の瞬間、無数のツタが敷石を割って飛び出し、博士の身体を縛り付けた。

「まるでスパゲッティだ!」

 ナタをふるってなんとか脱出した博士が走り出すと、今度は敷石が割れて赤い小石が蟻地獄のように博士の身体を飲みこもうとした。

「まるでチキンライスだ!」

 ムチを振るって頭上の梁に巻き付け、なんとか身体を引き上げる博士。
 三たび猛然とダッシュすると、背後から凄まじい轟音が響いてきた。
「!」
 巨大な丸岩が追いかけてきたのだ
 デコボコとした表面に茶色い玄武岩で出来た楕円形の大岩は……

「まるでハンバーグだ!」

 際どいところで洞窟の入り口を潜り抜けると、大きすぎる岩はその手前でドンと止まった。

 助かった……洞窟の奥の「お子様ランチ」は全てクリアした……

 博士はその場にへたり込み……
 弓や槍を構えた原住民に取り囲まれていることに気付いた。

「お久しぶりね、印西博士」

 原住民たちの中から、サファリルックに身を包んだブロンドの美女が現れた。
 日系フランス人の女流考古学者、藤子レミングだった。
 レミングは印西博士から像を取り上げて仁王立ちした。
「せっかくの苦労を台無しにしちゃうけど、黄金像はいただくわよ」
「なんの権利があってそんなことを……?」
「あら、知らないの? この国で発掘活動をするには、現場に学者が自国の国旗を立てとかないといけないって法律で決まってるのよ?」
 見ると、レミングの背後にはトリコロールのフランス国旗が翩翻と翻っている。
「というわけで、この像は法的に私が発掘したことになるの。じゃーねー」

「くっそー! フジコめー!!」

 印西博士は歯噛みしたまま気を失った。

 お子様ランチは旗を立ててこそ、完成なのだった。


たらはかにさんの募集企画「#毎週ショートショートnote」参加作品です。
お題は「【洞窟の奥はお子様ランチ】のお題で【冒険小説風】」。
410文字はおろか、オーバー1200文字。
冒険もので1000文字以内とか無理です!
なんか、色々混じってますけど、印西博士のセリフは山田康雄さんの声で読んでください。
😁

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