見出し画像

銀河帝国本同好会 ④ 「宇宙気流」

中国、韓国からの傑作群で賑やかなSF小説界ですが、まったく着いて行けないまま古臭い古典を読みあさっております。
今回取り上げるのは、アイザック・アシモフ著「宇宙気流」です(1952年発表)。
ドラマも評判の「ファウンデーション」と世界を同じくする「銀河帝国」シリーズの一冊です。

しかし、この作品の時点ではまだ統合国家としての「銀河帝国」は存在しておらず、あまたの星間国家の一つとして、前身であるトランター帝国が登場します。
その時代の宇宙文明にとって欠くことのできない貴重かつ高価な繊維「カート」。
その唯一の産出地である惑星フロリナを主な舞台に、フロリナ消滅の危機を予測した空間分析家の失踪をめぐる陰謀劇です。
お膳立てはSF仕立てですが、ほぼスパイ小説か推理小説の趣です。
巨大な星間文明を築き上げても、人類のやることはあまり変わらない…ということを、こうしたSF小説を読むとよく感じます。
「デューン」なんかもそうですね。
砂の惑星やサンドワームといったイメージを度外視すれば、やっていることは古典的な貴族間の抗争劇です。
「宇宙気流」では、はっきり「貴族」なる階級の人間たちが登場し、フロリナの「原住民」を搾取しています。
終盤では、その体制が崩壊するであろうことが示唆されるのですが、どんなに科学文明が進んでも変わらない人間の愚かさが、こうした小説の主骨格になるのだなと思わされました。

ハヤカワ文庫のカバーにはスタジオぬえデザインの、カッコいい空間分析艇なるメカが描かれているのに、こんなものはまったく登場しません。
(^_^)

この記事が参加している募集

海外文学のススメ

SF小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?