君には本当に振り回されたね。
　まるで秋の空のようにコロコロ変わる気分に付き合って、僕も相当に苦労したよ。

　誕生日には君は必ず、時計を欲しがった。
　でも、一年経つとデザインが気に入らなくなったと言って、また新しい時計をプレゼントさせられた。
　たまには違うものをあげたかったが、何年も続けたプレゼントはどんどん溜まっていった。
　君の真意に気づいたのはずいぶん後のことだった。
　君は、僕と過ごした時間が刻まれた時計を一年ごとに替えることで、その年の思い出ともども手元に置いておけると思ったんだね。

　君と過ごした年月はそれなりに大変だったが、一緒になって本当に良かったと思うよ。
　あれほど気まぐれだった君が、この日には律儀にも必ず会いに来て時計を並べながら話しかけてくれる。
　でも、もう線香の火も消えたからお帰りよ。

　今日の秋空は変わりそうにないから、雨の心配はないけどね。

完

たらはかにさんの募集企画「#毎週ショートショートnote」参加作品です。
お題は「秋の空時計」。
ブラックなオチが続いたので、ほのぼのさせたつもりです。
なんと、400文字に満たない384文字というあっさりさ！
どうだ！（何が）
😃