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【SFショートショート】戦国時代の自動操縦(オートマタ)

 そのG3型恒星には、大規模な異変が起きようとしていた。
 近日中に太陽嵐が発生し、系内の惑星に高エネルギーのプラズマが到達すると予測された。
 恒点観測ドローン7号は、司令船からの指示により恒星と各惑星のスキャンを行ない、その第三惑星に知的生命体の存在を発見した。

「二足歩行型の高度な知的生物が、惑星全土に棲息しています」
「文明レベルはどの程度か。太陽嵐の影響は著しいものとなりそうか」
 司令船からの問いにドローン7号は迅速に答える。
「光学観測の結果ですが文明レベルは2。電力や内燃機関の存在も確認できません。四足動物の家畜を利用して移動しています。太陽嵐の影響は小さいでしょう」
「今後、発展の可能性はありそうか」
「不明です。文明としては長期の停滞にあるようで、原因は恒常的な戦争状態と思われます」
「戦争が惑星外に広がる恐れはないのだな」
「はい。宇宙飛行の技術もなく、未だ原始的な火器と刃物による領土の奪い合いにととどまっていますので」
「念のため、恒星の状態と並行して彼らの監視を続行せよ」

 やがて予測通りの太陽嵐が発生し、ドローン7号からの通信は一時中断した。
 再開した報告の内容は驚くべきものだった。

「第三惑星上の知的生命体は全て活動を停止しました」
「どういうことか。太陽嵐が原因なのか」
「はい。精密スキャンの結果、彼らは機械生命体であることが判明しました。太陽嵐が彼らの制御系に致命的影響を与えたものと思われます」
「何者かが造った機械生命体ということか」
「はい。彼らの造物主ははるか昔に絶滅したようです。残された彼らは造物主が残したソフトウェアプログラムを元にそれを現実化することで自らを改造し、自分たちの目的を探していたと思われます。しかし、ソフトウェアのほとんどは娯楽や慰みのためのものだったようで、彼らはそれをシミュレートしていたに過ぎません」
「つまり、ゲームを現実化していたわけか。いつ果てるともない戦争として、ひたすらそれを繰り返し……彼らは何かを求めていた……だがそれも終わったのだ」

 その後の調査で、機械生命体が惑星全土で展開していたプログラムの名称が明らかとなった。

 「……ノヤボウ」

 空白部分は固有名詞だったので、ドローンにも司令船の主にも意味はなかった。


たらはかにさんの募集企画「#毎週ショートショートnote」参加作品です。
お題は「戦国時代の自動操縦」。
無理くりに「オートマタ」とふりがなをつけましたが、要はロボットのことです。
ちょっとわかりにくい話かもしれませんが、要は地球全土でロボットが自動操縦で「〇〇の野望」をやってたというお話でした。
ちなみに「信長の〇〇」は、やったことがありません。
🤗

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