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【ショートショート】出撃!機動ツノのある東館

 K県鬼形市。

 家を災厄から守る鬼瓦の名産地として有名な街である。
 市章も鬼をイメージしたデザインで、街角には鬼の置物や鬼瓦形のポストなどが多く見られる。

 その中心部には、市庁舎をはじめとする公共施設の建物が整然と並んでいた。

 が、その最も東側に位置している建物だけは用途がはっきりしなかった。
 市外からの来訪者が地元民に「あの建物は何?」と尋ねても、意味ありげな笑みを浮かべて首を振るだけ。
 しかも、東館とだけ呼ばれるその建物は、メタリックな外観の左右から鬼のツノのような突起物が飛び出しており、一層正体不明の雰囲気を醸し出していた。

 そんなある日、地球は外宇宙からの侵略にさらされた。

 巨大な宇宙船からの空襲で、世界中の都市は炎に包まれた。
 そして、ついに鬼形市に魔の手が迫った時……
 ……東館に駆け込んで、専用シートに着いた市長が叫んだ。

「機動施設デモノイダーZ! 発進!」

 ツノが輝き、東館は地面を割って浮上した。
 周りの施設も土煙をあげながらそれに続き、そのすべてが合体して、ついに東館を頭部とする巨大な人の形となった。

 巨大ロボット、デモノイダーZである。

「デモノサンダーフラッシュ!」
 東館のツノが巨大化し、強力なエネルギービームが放射され、侵略者の宇宙船群は瞬く間に撃破された。

 デモノイダーZは人類の救世主となり、鬼形市は地球を守る鬼瓦のように、防衛の一大拠点となったのだった。

「……という設定のテーマパークをですね。市の中心部に作って観光需要を掘り起こそうというプロジェクトです。市庁舎東館は顔みたいな形をしているので、ツノをつけるだけでシンボルとして格好がつきます!」
 建設会社の担当者の説明に、市の観光課長は眉をひそめながら尋ねた。
「それで、総工費はいくらくらいになるんですか?」
「今ならお得な価格で実現可能なキャンペーン実施中です!」
 ドンと画面に映った金額は、市の年間予算の数年分に相当した。

 結局、その観光地化促進計画は頓挫し、東館にツノが付くことはなかった。


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お題は「ツノのある東館」。
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