上昇気流
こんな乾いた風の吹く日に T シャツを干すことくらい気持ちの良いことって他にあるかな?
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梅雨の晴れ間の朝。
僕は君が会社に行くのを見送ってから、部屋の窓とカーテンを全開にして、洗濯機に洗濯物を放り込んだ。
コーヒーを落としながら、仕事の段取りを考える。
公園の上を通り抜けた風が勢いよく部屋の中に入ってきた。
・・・
洗濯物を干し終わってから、僕は落としたてのコーヒーで作ったアイスコーヒーを持ってベランダに出て、ぼんやり景色を眺めた。
「ちりん、ちりん。」
遠くから自転車のベルの音が聞こえてきた。
下を見ると、公園に植えられた楠の幹の隙間から、公園沿いの道をゆっくり走っていく自転車が見えた。
時折、少し強い風が吹いて、洗濯物がひらひらとなびき、かすかに洗剤の匂いが周りに漂った。
僕はパリッと乾いた T シャツを想像し、君と二人で T シャツをひとつひとつたたんでクローゼットにしまうところを想像して、幸せな気持ちになった。
空は、これからもずっとこんな気持ちでいられることを約束してくれているかのように気持ちよく晴れていた。
遠くでトンビがサーマルを捕まえて気持ちよさそうに、くるっくるっと回っていた。
・・・
結局、その約束は守られないことを知ったのは、その少し後だった。
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