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2-10.サウジ人はどんな性格?


 前章に引き続いて、サウジ人はどんな気質・性格なのかを私なりに分析してみたいと思います。もちろん、十人十色でみんな性格は違いますし、サウジ人に対するステレオタイプを持っていただくことは本望ではないので、おおまかな印象として受け止めていただけると幸いです。

・男社会サウジアラビア 
 イスラム教による男女の厳格な別離のために、サウジは強い男社会の絆で結ばれています。サウジにいて驚かされるのは、手をつないで歩いている男性をしばしば見かけることです。

 手をつないだり、ハグをしたり、頬をあわせたり、サウジ人の男同士のスキンシップはとても頻繁です。もちろんこれらはあくまで友情の示しであって、恋愛感情によるものではないそうです。同性愛はサウジではご法度です。

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2005年、手をつないで歩くアブドラ国王とブッシュ大統領。
Photo credit : JIM WATSON/AFP/Getty Images

・時間はゆったり 
 サウジ人の時間感覚は非常にゆったりとしていて、必ず日本人や外国人が困惑する点となっています。明日の予定が来週に、それが来月に、はたまた半年後に流れてしまうことも少なくありません。

 中東で日本人が生活すると苦しむことになるのが予定の調整です。ビジネスにしても会食にしてもなかなか日程が決まらなかったり、ころころ変わったりします。

 もっとも、一日のうちの集合時間や会議の開始時間は比較的守られる傾向にあるので、時間にまったくルーズというわけではありません。

 彼らの考えを理解するヒントとして、イスラム教の「インシャアッラー(神様の思し召しなら)」という考えがあります 。イスラム教徒は、何か未来の約束をする時に、かならず「インシャアッラー」を文に付け加えます。

 約束を守るために自分の力を尽くした上で、誠心誠意努力はするけれども、最後は自分ではどうにもならないことがあり、神様に委ねるという考え方です。したがって、予定や約束は絶対ではない柔軟なものなのです。

・おしゃべりが好き
 サウジ人は男女問わずおしゃべりが大好きです。お酒は飲まずともカフェに入り浸り、友人といつまでもコーヒーを飲みながらおしゃべりを楽しみます。飲み会という文化がないので、コーヒーをのみながら夜中の1〜2時までカフェにいる姿は最初は驚かされます。

 サウジ人への業務の説明会を行ったときも、議論はとても活発であり、非常に多くの質問で会場は騒然となりました。サウジ人の学びのスタイルとして、メモを取ってそれをしっかり身につけるというよりは、腹落ちするまで質問し議論を尽くすというスタイルのようです。

 もっとも、議論や抽象論は得意なのですが、それを実行に移したり、具体化することが少し苦手のようです。欧米のコンサルはこうした間隙に入り込み、サウジ人のプランを実行に移すための手足として大きな役割を果たしていました。

・新しいものに好奇心が旺盛
 サウジ人は目新しいものが大好きで好奇心がとても旺盛です。インターネットの普及率はとても高く、サウジ人にとってスマホは必須となっています。

 中でも若者を中心に人気になっているのがスナップチャットで、投稿が24時間で消えるというのが、表現の自由の規制が厳しい中で大流行している要因のようです。

 宗教や文化との関係で、写真は長く嫌われていましたが、スマホの普及以降、写真が生活に受け入れられつつあります。もっとも、一眼レフやデジカメのような本格的なカメラにはまだ抵抗があるようで、販売はされているものの所有率はまだ高くありません。

 新しいものと言えばITが大好きです。街中ではウーバーなどの配車アプリによるタクシーが走り回り、役所の手続きも大幅にペーパーレス化が進んでいます。

 また、厳しい気候のせいで外を歩き回れないこともあり、車が大人気です。トヨタ、日産、マツダといった日本車も人気で、たまに数千万円もする高級車が走っていることがあります。

 他方、社会問題となっているのは、街中で頻発している交通事故です。無理な車線変更やスピードの出しすぎによって、多くの交通事故を街中で見かけます。

 近年、警察による取締の強化によって、一時に比べると改善はしているとのことですが、いまだに無謀運転による事故が後をたちません。

・食文化は肉食中心 甘いものが大好き
 サウジ人の食文化は、肉食が中心になります。日頃は鶏肉を好んで食べ、人をもてなす時は羊肉でもてなします。他にも、牛肉やラクダの肉も食べられています。

 サウジの名物料理はカブサといわれる料理で、スパイスで味付けされたご飯の上に、鶏肉や羊肉がまるまる乗せられます。

 なんでもまるまるというのが好きなようで、野菜もまるごと供されます。一本丸々のきゅうり、ねぎが食卓に並ぶので、最初はどう食べていいか困惑させられました。

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ダンマンのサウジ伝統料理店にて。奥の野菜スティックがサウジサラダ。

 遊牧民族時代の経験のおかげからか、乳製品はとても充実しています。ヨーグルト、チーズはどれも美味しく、日本人の口にも合いやすいと思います。

 お酒を飲まない分、体が糖分を欲しているのか、サウジ人は甘いものが大好きです。たくさんの量の焼き菓子に、山積みのチョコレート、これらが彼らにとって最高の贅沢となっています。

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宝石のようなチョコレート。家庭や職場のゲストルームにならべられる。

 もっとも、石油が出る1938年まで、砂漠気候の中、貧しい生活が続いたせいか、食文化はあまり発展しておらず、サウジの伝統料理のレパートリーは多くありません。

 現在、サウジにはレバノン料理やイタリア料理、日本料理など様々なレストランがオープンしていますので、こうした料理を吸収しながら、さらなる伝統料理が生まれていくことを期待しています。

・サウジ人の服装 トーブとアバヤ
 最後に気質というよりは、外見的なことになりますが、サウジ人の民族衣装についても簡単に触れたいと思います。男性の民族衣装は、トーブと呼ばれ、真っ白な白装束を全身にまとい、頭には赤か白のスカーフを着用します。

 この白装束には、各国ごとの違いがあり、ドバイやカタール、サウジでは、ヒモのありなしや、襟の形などなど細部が微妙に異なっています。また、スカーフについても、柄や色などが地域ごとにことなっています。

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出典 http://kickshawproductions.com/blog/?p=11210

 また、白装束の生地の中でも最高級とされ、一番人気が高いのが日本製の生地だとされています。サウジでは、TOYOBO(東洋紡)、KURABO(クラボウ)などの日本製のブランドが非常に多くの人気を集めています。

 なお、この衣装はアラビア半島の民族衣装であり、イスラム教とは関係がないので、イスラム教徒でなくても着用することは可能です。国や地域によっては、他国の人がトーブを着用していることに違和感を覚える人もいるようですが、少なくともサウジの首都リヤドでは、日本人がトーブを着ていると大歓迎されます。

 トーブは職場での正装でもあり、私も職場にトーブを着ていったところ、スカーフの身につけ方を手とり足とり教えてくれたり、とても大好評でした。トーブを一着しか持っていなかったので、翌日、スーツで出勤すると同僚に非常にがっかりされた程です。

 次に、女性の民族衣装といえば、黒ずくめのアバヤです。イスラム教の教えに基づいて、肌や頭髪を隠せるようになっており、遠目に見るとどれも一緒に見えるのですが、裁縫や飾りなど、細かな点はどれも異なっており、アラブの女性のこだわりが感じられます。

 アバヤの下には、とてもきらびやかな装飾がほどこされた衣装を着ていることが多く、公衆の場では披露できないものの、内々でのホームパーティーなどでの女子会で、おしゃれな衣装を披露することが、サウジの女性の楽しみとなっているようです。

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アバヤ姿でサッカー観戦を楽しむ女性。近年、女性のサッカー観戦が解禁された。CNNより。https://www.cnn.com/2018/01/12/middleeast/saudi-women-attend-first-soccer-match/index.html
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