｢自分は何も知らない、知ることができないっていうことを知ることがさ、やっぱ重要なんだよ。知ってるつもりでウンチク垂れてもさ、なんか痛々しくて。無知の知だよ｣
｢なるほど……。鞭の血ね。でもそんなの見たらビビっちゃうけどね、俺は。痛いのはいいけど｣
｢ビビる？まあ、そうだよ。俺だってビビっちゃうよ。よく恥ずかしくないなって｣
｢でもそれがいいんだろ、うんち垂れたり、その羞恥プレイが｣
｢周知プレイ？そんなプレイあんのか？なるほど……。お互い周知してからのディベートか……。それはハーバードなんちゃらスクールか？｣
｢はあ？バード？鳥の話なんかしてねえよ。話、ちゃんと聞けよ。ってかスクールってなんだよ｣
｢あ。そう、スクールって言えば、沙紀女王様が『Ｍ男君のマゾ学園』に移籍したらしいよ｣
｢だからその話だろ、さっきから。鞭の血って｣
｢ちげえよ。無知の知はソクラテスだろ｣
｢ソクラテスの時代にＳＭはねえだろ。サドとマゾッホは近代に入ってからだって｣
｢近大？なんでヨーロッパ人が近大に入ってんだよ。知ったかぶりすんなよ｣
｢してねえよ。俺は自分が何も知らないってことを知ってるんだよ。無知の知だよ｣