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ペトリコール

鈍い頭でクラゲの夢を見る
サソリの毒で身体中痺れてしまって
ふわふわ意識だけ水色のバブル浮かべて
空を壊す爆弾を上昇気流に乗せる
火薬の代わりにシャーペンの芯詰めて
百均で買ったダサい箱を起爆スイッチにして
高笑いはしない
ていうか、できないから
代わりに隣の犬のピーチが遠吠え
目だけ自由に動かせる
過去と未来を行ったり来たり
スマホばかり見てる人たちを後ろから襲う
ナイフで滅多刺しにしてやる
爪切って髪洗ってYouTube見る
テレビや新聞よりもネットの方が
もっとたくさんの嘘で溢れてるのに
ぼくらは馬鹿みたいにSNSに依存して
検索窓に疑問符を打ち込みサーチする
一つの花にいくつかの花言葉
その中から自分のイメージ見合ったものを
チョイスして歯と歯の隙間に挟み込む
虫歯になる前に死ななくちゃ
麻縄と練炭と睡眠薬とカミソリを収めた
ナップザックを背負って市営団地の4階
名も知らない白い鳥が小さな群れを成して
視界にフェードインそして無言で去っていく
昔好きだったヒーローや
昔好きだった曲を思い出して
靴紐が解けているのに気づいて
泣きたい。
平成とはなんだったんだろう
今じゃもうわからないから
検索窓に無理やり押し込んで
【検索】ボタンをフリックできないでいる
空なんて青かった試しがないよ
掬ってみればいつだって透明がそこにある
それだけだ
お利口さんはお馬鹿さんと何が違うの?
嘘と本当の価値はどのくらい下がったの?
ぼくはいつ死ぬの?
知らないほうがよかったことを知ってしまった人は一体どうなってしまうの?
いつのまにか
検索窓はもう言葉で埋め尽くされてて
街は燃え
空は灰と化して
ぼくは蛍光灯に照らされて
闇に溶けることもできずに
爪の先の感触を研ぎ澄ます

#詩 #自由詩 #現代詩 #100日詩チャレンジ #48日目 #ポエム #note文芸部

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