サンタはグリーンランドにいる。

"En julekalenderhistorie i 24 afsnit, Nisserne på Grønland" af Christina Brandt, illustreret af Susanna Hartmann. 1989. 「クリスマスカレンダーストーリー グリーンランドのこびとたち」お話童話 デンマーク

サンタがどこの国に住んでいるか、という話になると、普段は温厚な北欧人も心穏やかではなくなる。フィンランド人にとってはラップランド、デンマーク人にとってはグリーンランド、でも実はスウェーデンにもサンタワールドなんていうものもある。サンタの居場所について合意するのはとても難しい。

今回のお話の舞台はサンタの住む国、グリーンランド(デンマークのお話ですから)。12月1日、デンマークに住むニッセたちがクリスマスの準備をしていると、グリーンランドのサンタから手紙が届く。「いつも子どもたちからの手紙を届けてくれる助手のこびとたちがいなくなってしまった。グリーンランドまで来て手紙を探し、プレゼントの準備を手伝ってくれないか」とのこと。こびとたちは大急ぎで船に乗り、グリーンランドへと出発する。そしてグリーンランドに到着すると、こびとたちはシロクマやアザラシに、いなくなったこびとを見かけたか尋ねて歩く。そんな中、こびとたちはグリーンランド人のこびとにも出会う。グリーンランド人のこびとは、アザラシやくじらの脂身で作ったお菓子をこびとたちにふるまう(が、不味いと不評…)。グリーンランド人のこびとはいたずらこびと。なんと150年もの間だれも訪ねてきてくれなかったらしく、ここぞとばかりにデンマークから来たこびとにいたずらをするのだが、サンタのお手伝いこびとを探すことにも協力してくれる。そして、クジラの背中に乗り、流氷で休憩していて流されたこびとたちを見つける。こびとたちはサンタの家へ無事戻り、プレゼントの準備を大急ぎで終えて、23日にサンタを世界の子どもたちの家へと送り出す。

前回はこびと(ニッセ、トムテ)のお話と、北欧のこびとについて書いたが、このこびとたちは、スカンジナビアにキリスト教が入ってくる前から存在していたといわれている。もともとは家や農家を守ってくれる神として信じられていたが、19世紀ごろからはクリスマスにプレゼントをもたらしてくれると言われるようになったそう。

このお話はタイトルにように、24日分にわかれていて、12月1日から一章ずつ読めるスタイルになっている。デンマークでは「カレンダーストーリー」と呼ばれていて、このようなスタイルのお話は他にもたくさんある。またテレビでも12月1日から毎日続くクリスマスストーリーがある。図書館には、12月1日からクリスマスカレンダーの本を読み始めるために、11月半ばを過ぎるとこういったスタイルの本を借りに来る人が増える。そういう意味でも11月半ば頃から本格的にクリスマスの準備に入り、12月1日には準備完了で臨む、というのがスカンジナビアのクリスマスだ。

今回のお話で興味深いのは、グリーンランドが舞台となっていること。グリーンランドは自治政府があるが、デンマーク王国の一部である。デンマークにはそれほど雪が降らないからこそ、雪深い北の果てであるグリーンランドにサンタが住んでいるとデンマークの人々は言いたいのかもしれない。お話の中には、グリーンランドの生き物であるシロクマ、アザラシ、クジラも登場したり、グリーンランドの食べ物、matteqと呼ばれるアザラシやクジラの皮下脂肪でできたものも登場する。少し気になるのは、グリーンランド人のこびとがいたずらこびととして登場していることで、これはもしかして今の時代だと、ポリティカルコレクトネスにひっかかるのではないかなーということ。80年代が、両国にとってどういう時代だったのかはわからないけれど、今の時代にこの本があまり読まれていないことからも、少し古い時代のものと言えるかもしれない。

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