北欧のクリスマスはこの人たちなしに語れない

"Nissen" af Astrid Lindgren, Kitty Crowther. Gyldendal.  Svensk titel "Tomten är vaken" fra 1960.  日本語タイトル「みまわりこびと」 アストリッド・リンドグレーン作、キティ・クローザー絵 スウェーデン

クリスマスも折り返し地点に入り(だって12月1日からクリスマスですから!)、どこを向いても、毎日がクリスマス一色になってきているので、シーズンが終わるまでにひとつぐらいはと、クリスマスの本を紹介します。ちなみにこの本は、アストリッド・リンドグレーン作で1960年に出版され、日本語訳も出版されています。

夜、雪の降りつもった古い農場はしんと静まりかえっている。物音ひとつ聞こえないけれど、ひとりだけ、この時間に起きている人がいる。それは農場に住むトムテ。月の光が照らす雪の上を、トムテはそっとそっと歩きながら、農場に暮らす動物や子どもたちに声をかけてゆく。冬が来て、そして春が来る。やさしくささやくトムテ。声をかけ終えると、トムテはまた屋根裏へと帰ってゆく。今の時代、クリスマスというと華やかなイベントになってしまっているけれど、昔のクリスマスはこんなふうに、静けさの中で過ごしていたことをこの本は教えてくれる。

デンマークやノルウェーでは、この本の主人公であるこびとを「ニッセ」と呼ぶのだけれど、スウェーデン語では「トムテ」というらしい。スカンジナビアには、赤い帽子を被ったこびとの絵本は他にもいくつもあり、日本語訳が出版されているものもあるが、たいていはスウェーデン語からの翻訳で「トムテ」として訳されているようだ。

この人(たち)なしに、スカンジナビアのクリスマスはないと言っても良いとぐらい、このこびとたちの存在は大きい。彼らは屋根裏に暮らしていて、人間の家を守ってくれているといわれている。そしてクリスマスになると屋根裏からごそごそとでてきてあれこれ小さないたずらや、嬉しいハプニングをもたらしてくれるので、大切に扱わないといけない。この時期、何か予期せぬことがあったり、何かをなくしたときなどには、たいてい「きっとこびとの仕業だね」というのがお決まりの台詞でもある。

さらにデンマークの幼稚園などでは、毎年12月になると、園から子どもの家にこびとがお泊りにやってくることもある。「いたずらこびと」と呼ばれるこのこびとたちは、子どもの家でいたずらをする!その様子を、こびとが持参した日記帳に書き、翌日こびととともに園にお返しするのが親のしごとでもある。わが家にも昨年、一昨年といたずらこびとが泊まりに来て、息子の部屋やおもちゃにたっぷりいたずらをして帰って行った。

こびとの赤い帽子を被り、登校する子どもたちも多いこの時期。街の中あちこちに、こびとたちを見かける時期でもある。

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