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東京四次元紀行(小田嶋隆)

なぜこの本

世間はゴールデンウィーク。
海外や遠くにお出かけする方も多かったのではないでしょうか。
東京から離れ、再び東京に戻ってきたときの感覚。
親戚と久しぶりに会って、普段とは違った接し方をされるときの感覚。
私はこの本を読んだときに登場人物たちにあの感覚を見ました。

著者はコラムニストの小田嶋隆氏。
執筆されていたア・ピース・オブ・警句は言いづらい本質をすっと突いたコラムで、賛否両論出そうな内容ですが、私は好きです。
他の目的でネットを見ていて遭遇してしまい、つい読んでしまったこともしばしば。

コラムニストである小田嶋氏が短編小説集を上梓されたのは2022年6月5日。
同じ6月の24日に小田嶋氏は急逝されました。
急逝のニュースと同時に本書出版を知ったのが当時手に入れたきっかけ。

どんな本

東京を舞台とした物語が32話収められた短編集。
前半は漏れ過不足なく新宿区から港区まで23区を網羅した舞台。
後半には多摩地区も出てきますので23区外住所の方もご安心を(?)。
登場人物が時代や場所を移動して短編相互間に異なる顔で登場する点が、四次元を名乗る由縁なのでしょう。
時代や場所を移動した登場人物を多面的に見られるのも面白い。

人間は誰しも多様な属性を持っているはずです。
学校や職場、家庭にコミュニティ、男女関係や親子兄弟関係。
そういった属性は普段誰かを見る時の一視座に過ぎません。
登場人物たちの時代、背景、境遇に同調や共鳴することは正直少なかったですが、人を見る、ということを考えさせられるお話が多かったです。
生きていく上での人と関わりでは様々な事が起こりますが、多様な見方を備えておくと備えができます。
こういうこともある、と本から学べることもあるのではないでしょうか。

東京都内各地の情景が「らしく」描かれている点も興味深いところ。
もしかしたら地域に愛着ある方が眉を顰めそうなものもありますが…
歯に衣着せぬコラムニストらしい、と思って苦笑いして許してもらえれば嬉しいです。

誰が、いつ読むのがおすすめ

タイトルからは「東京縛り」を感じるかもしれませんが、東京に縁のある人も、縁も所縁もない人もライトな短編集として楽しめます。
東京に縁のある人と東京に縁も所縁もない人がそれぞれどういった感想を持たれるのかはぜひお聞きしてみたいところ。
舞台となったエリアに縁のある人の読後の感想もぜひ聞いてみたいですね。

まだ見たことのない東京の人々を覗いてみませんか。

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