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「クォリティ・スクール」生徒が強制されなくても進んで質の高い学びをする、リードマネジメントの方法がわかる本

選択理論がよくわかる本の紹介#4



「クォリティ・スクール」という本が重要な最大の理由

それは、「クォリティ・スクール」がリードマネジメントのことを説いている本であるという点だと私は考えています。

本の題名の「クォリティ・スク-ル」とは、「生徒が進んで質の高い学びを喜んで楽しくする学校」というような意味でしょう。

しかし、この本の副題は「強制を使わずに、生徒をマネジメントする」(Managing  Students Without Coercion)です。

選択理論をどのように対人マネジメントに使うのかを説明しており、選択理論による対人マネジメントの本として、広く、深く、検討され、学ばれるべき、重要な本だと思います。

①「リードマネジメントがよくわからない」という素朴な疑問

私には、リードマネジメントが、今でも、わかったようでよくわかりません。その問題意識について、少し書きます。

私たちが、選択理論を人間関係の改善のために使うときには、「人は自分の行動だけをコントロールできる」という選択理論の大原則の下で、もっぱら、「自分側の行為と思考を変えることで対処する」ことが説かれます。

具体的には、例えば、相手に対する外的コントロール(批判する、責めるなどの7つの致命的習慣に代表される)をやめて、代わりに、相手を受け入れる、支援するなどの選択理論の7つの習慣を行うこと、を自分側の行動としてすべし、そうすれば、人間関係がよくなり、お互いの欲求充足につながって、お互いが自由になれる、と説かれます。

このことは、「結局、それぞれが自分の人生を自由に生きればよいのだ」という場合には、これでもかまわないと思うのですが、

一方で、職場、学校、そして、家庭においても、人間関係さえよければ、みんながばらばらな方向で好きなようにやればよい、ということではすまない場合も多くあります。

ここで対人マネジメントの意味を「人の行動を介して自分の仕事をすること(目的を果たすこと)」という意味で考えますと、「自分の期待通りに相手に行動してもらうこと」が必須になる場面が、日常にはあふれています。

このとき、従来から、多くの人は、外的コントロール(アメとムチ)を使ったボスマネジメントで相手を動かしているのですが、選択理論を使って対人マネジメントをする場合には、「人は自分の行動だけをコントロールできる。相手の行動をコントロールすることはできない」「相手に外的コントロールの行動をしてはならない」という原則を守らなければなりません。

にもかかわらず、自分には、職場や学校、家庭から与えられた役割や、果たすべき使命があり、そのためには、「自分が相手に期待する行動」をとってもらう必要がある。

「自分側の思考や行為をコントロールすることだけで、どうやって、自分が期待する行動を、相手に自発的に(相手の内的コントロールによって)とってもらえるのか。そして、自分に課された役割や使命を果たせるのだろうか?」

そういうことができやすい場面(みんながバラバラに行動しても、目的が達成できる場合)と、難しい場面(みんながまとまって役割分担や行動の調整、スケジュールの調整をしないと目的が達成できない場合)があるのではないか?

そういうことが難しい場面でのリードマネジメントは、いったいどういうふうにやればいいのだろう?

「ボスマネジメントをやめて、いったい自分はどうやって、自分の期待通りに相手に動いてもらえばいいのだろう?」という切実な問題(疑問)が生まれてきます。

「クォリティ・スクール」は学校や教育の場面で、ボスマネジメントを使わずに、選択理論の原則の下で、どういうふうに「人の行動を介して自分の仕事をすること(目的を果たすこと)」という対人マネジメント(リードマネジメント)を行うのかについて、具体的な考え方や方法を説いている、という点で、「リードマネジメントの基本書」という位置づけの本だと思います。

ただ、よく読んでも、自分としては、あいまいで、よくわからないところがたくさん残っている感じがします。

とはいえ、この本は、「自分側の行為と思考を変えること」から、さらに踏み込んで、「相手の行動を介して自分の仕事をすること(目的を果たすこと)」を扱った本であり、熟読の価値があると思います。

以下は、この本の簡単な概要です。

②「クォリティ・スクール」におけるリードマネジメントの説明

ア、 リードマネジメントとはどのようなものか

この本の主な内容は、学校での生徒に対するマネジメントを取り上げて、従来の「指示命令による上からのマネジメント(ボスマネジメント)」に替わる、「選択理論にもとづく、強制を使わないリードマネジメント」の考え方と方法について詳しく説明する、というものです。

この本で書かれている、学校教師の指示命令による上からのボスマネジメントの弊害と、生徒に対して強制を使わないリードマネジメントの大きな可能性は、職場や、家庭における「人を活かせないマネジメント」と「人を活かせるマネジメント」の比較としても、同様のことがいえると思います。

私たちの日常生活では、「相手との良好な人間関係を維持しながら、できるだけ、自分の期待通りに、相手に自発的に行動してもらう」という意味での「対人マネジメント」が必要な場面は、学校だけでなく、職場でも、家庭でも、いたるところで、日常的にあふれています。

この本は、選択理論を使った、人を活かすマネジメント方法としてのリードマネジメントを丁寧に説明しており、たいへん、参考になります。

イ、 生徒に対するボスマネジメントとリードマネジメントの違い

この本の内容ですが、この本の中で、グラッサーは、これまでの教師は、生徒に対して、ボスとして、

  • 教師の権威に依拠して、

  • 生徒を駆り立て、

  • 生徒の怖れを引き出して、

  • 教師の指示命令を守らせ、

  • 生徒に単調なをおもしろくない勉強を強いて、

  • 言うとおりしなければ生徒を責め、

  • できが悪ければ、生徒を批判して、

  • 教師に対する生徒の反抗や恨みを作りだし、

  • 生徒の学習成果も上がらず、

  • 規律違反をする生徒をたくさん生み出す、

というような「ボスマネジメント」を行ってきたとし、

それに対して、選択理論を使うことで、教師は、生徒のリーダーとして、

  • 生徒を導き、

  • 生徒に協力をしてくれるように依頼し、

  • 生徒の確信を育み、安心感と安全が感じられるようにし、

  • 生徒の欲求充足を手助けし、

  • 学習内容や方法を興味深くして、

  • 生徒の生活や人生で本当に立つことを身に付けてもらい

  • 生徒の学びに対する情熱を生み出し、

  • 生徒に自主的な勉強を進んでしてもらい、

  • 生徒に、していることの質を自己評価して、より上質を目指して、継続して努力してもらい、

  • 生徒が望む、大きな学習成果を上げてもらう、

、というような、「選択理論にもとづくリードマネジメント」の考え方と方法について紹介しています。

ウ、 リードマネジメントの特色

その中でも、特に、筆者(私)には、次のような、

・生徒に、学習の目標やゴールを自分で決めて、学びたいことを学んでもらい、その学びの質についても、教師が評価する他者評価でなく、生徒自身に、自分の学びの質を自己評価してもらうことによって、生徒自身が、より上質な学びを目ざして、自ら、継続的に、動機づけされる。そのため、教師が生徒に対して強制を使う必要がない、

生徒はしたいことができ、また、教師との人間関係が良好になるので、生徒の欲求が充足されやすく、学校の規律(ルール)違反の問題がほとんど起きない、

などの点が新鮮でした。

また、グラッサーは、この本の中で、学校全体が「クォリティスクール」であるといえるような基準と、そのような「クォリティスクール」になるための方法についても、述べています。

以上、冒頭の大上段の問題提起に対して、簡単な内容紹介で、竜頭蛇尾の感があり、申し訳ないのですが、あしからず。



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