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「警告!」-精神病は選択理論のカウンセリングだけで改善する-という大胆な主張以外に、選択理論学習者には2つの点で大切な本です。

選択理論がよくわかる本の紹介#7

上では本の価格が7651円になっていますが、定価は2640円(税込み)です。


日本人的に「書名」で損をしてる感もある名著

① グラッサーはこの本で「精神病は、患者の大切な人間関係が回復し、本人の基本的欲求が満たされれば、薬を使わなくてもよくなる」と主張してます

精神医療では、医師はすぐにドラッグ(薬剤:抗うつ剤、抗不安薬、抗精神病薬、など)を処方しますが、患者にとって、これらの精神薬の怖さ、弊害を強い調子で警告するというのが、本の題名の由来です。

まさに、「あなたの精神の健康を損なうおそれがありますので精神科には注意しましょう」というのが、この本でグラッサーが一番主張したいことだと思います。

この本で、グラッサーは、「内的コントロール心理学である選択理論」の立場で、

・うつ病などの心の病も、人が自分自身で創造的に選択している行動の1つである。心の病のほとんどは、人々にとって大切な人間関係をよくし、自分自身がよりよい行動と考え方を選択していくことで改善できる、

という考え方から、精神薬を使わず、心理カウンセリングのみで患者の症状を改善できることを主張しています。

② 私たちの「心の健康(メンタルヘルス)」は、今よりも人間関係が改善し、基本的欲求が満たされれば、よくなります

また、グラッサーは、本書で、人々の「公衆衛生」という立場から、

・人々は、自分にとって大切な人間関係をよくし、自分自身の基本的欲求を満たせるよりよい行動と考え方を選択して生きていくことで、心の病を予防し、精神的健全(メンタルヘルス)と、幸せな生き方を実現していける、

と主張し、選択理論を、新たな「公衆衛生、メンタルヘルス(精神的健全)」という領域に適用して、選択理論で、心の病を予防し、改善し、精神的健全(メンタルヘルス)と、幸せな生き方を実現していきましょう、と提案しています。

③「警告!」でなく、「推奨!」の方がよいのでは? 2つの点で選択理論学習者には大切な本です。

ところで、選択理論を学習し、実践する一人として、筆者は、この本は、「警告」ではなく、「推奨」という題名の方がずっとよいのではないかというくらい、別の意味で、重要な本だと思います。

別の意味として、2つあります。

1つめは、この本で、公衆衛生の普及、メンタルヘルスの推進の観点から、フォーカスグループという名称の「少人数グループの選択理論の学習会」の運営方法が紹介されていることです。

フォーカスグループは、指導者を含めた、10名程度の少人数のグループで、選択理論を学び、生活で実践して、状況を報告し合い、疑問の解消や、より良い方法を話し合い、お互いに、自分の人間関係を良好にして、願いごとと基本的欲求がよりよく満たせるようにし、メンタルヘルスと、より幸せな生活ができるように、がんばりあいましょう、

というようなグループです。

このようなグループをつくることは、それほど敷居が高いわけではなく、また、このグループでは、専門的なカウンセリングをするわけでもなく、対等な立場の者どうし(ピア)による選択理論の学びと実践の場、であるとされます。

これまでは、「選択理論を学んで、身に付けて、選択理論の目を通して、生き方を変えていく」ためには、選択理論の理解と、考え方の切り替えのためには、2年は必要である、とされてきましたが、フォーカスグループでは、一般の人でも、もっと短期間で、選択理論が理解でき、日常生活で実践でき、効果を上げられることが前提とされているように思います。

これが、私が思う第一の重要な点です。

2番目の重要な点は、「選択理論」は、その具体的な内容や全体像が、他のグラッサーの本では、今一つ、抽象的、理論的すぎてわかりにくいところがあるのですが、この本では、初心者にも、選択理論の考え方と、具体的な実践方法が、わかりやすく、くわしく紹介されていることです。

それが可能となったのは、グラッサーの選択理論の紹介が、選択理論になじみの薄いフォーカスグループの人々に対する説明という形で行われているからだと思います。

この本では、グラッサーは、初心者にも理解できるように、選択理論の重要な全体像と要点について、具体例を挙げながら、かみ砕いて紹介してくれています。

その一方で、グループの人々が、学んだ選択理論と方法を、実際の生活で実践し、その成果や効果を報告し合い、また、実践する上で疑問に感じたところの質疑応答しあう様子、などが丁寧にまとめられています。

良質の指導者のもとでの「選択理論の共同学習会」の実践報告のような体裁の本になっており、読者にとっては、いままでよくわからなかった、あちこちのかゆいところに手が届くような、そんなありがたい内容の本になっています。

「警告!」という題名に振り回されず、「精読してみよう」という行動を選択されると、得るものが非常に多い本だと思います。





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