■ 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 #ME_CFS と #HPVワクチン 接種後症候群についてのメモ version 0.1 (2016/1/31)


■ 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 #ME_CFS#HPVワクチン 接種後症候群についてのメモ version 0.1 (2016/1/31)
  文責: 澤田石 順(秋田高校山嶽部出身)  jsawa@nifty.com

○本文書の所在(twishort) ⇒ twishort.com/IXQjc
○参考: #HPVV ヒトパピローマウイルスワクチン #HPVワクチン ( #子宮頸がんワクチン と詐称)、製薬会社とWHOの関係について等 - version 0.6 (2016/1/31)
  ⇒ twishort.com/RqPjc

★目 次★
@@はじめに
@@戸田克宏先生とのやり取り
@@ミトコンドリア機能異常説 by Sarah Myhill

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@@はじめに
 私、2008年からのリハビリ棄民政策差し止め訴訟を手段としての運動をしていく過程で、2010年に(故)佐藤香織さん(多発性肝腎嚢胞、後に福島から原発事故のため東京に避難)と出会い(当時、山脇直司東大教授[公共哲学]とも同時に知り合う)、香織さんから篠原三恵子さん(当時、《慢性疲労症候群をともに考える会の代表、現《筋痛性脳脊髄炎の会理事長》)を紹介していただきました。「私なんかよりもっと大変な患者さんがいる」と。
 以来、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の患者会とかかわり、微力ながらできるかぎりの応援をしています。
 篠原さんと出会う前に、リハビリ棄民政策中止を求める活動の中で、(故)多田富雄先生(免疫学の世界的権威)、ポリオの会の小山万里子会長、線維筋痛症(FM)友の会代表の橋本裕子さんとも知り合い、両会のメンバーにもさせていただいております。
 私は何の専門資格もなき唯の医者で、英文医学論文の筆頭著者としてたった一本しかないしょもない者(30才の時、ヒマラヤの八千メートル峰登頂のため秋田大学医学部の脳神経外科・大学院を中退し、秋田から脱北)です。こんな低能力の私ですが、ME/CFSについて文献をいろいろと読み、ME/CFSの病態についてあれこれと考えてきました。
 諸国にME/CFS患者は沢山あり、膨大な文献が存在しますが、未だに、原因不明、客観的診断手段無し、根治療法無し、社会的認知不足、(特に日本では)医師一般の認知はほとんどなし、日本では専門的研究者はごくわずか、社会保障制度の枠外(制度の谷間)。
 患者さん達の願いは有効な治療手段確立、客観的な診断手段の確立、社会保障制度への取り込み。篠原代表達の精力的な活動により、国会議員達と厚労省の官僚達が真剣に対応してくれて、障害年金については厚労省が通達を発してくれたりと、社会保障制度における「制度の谷間問題」は少しだけですが改善しています。しかしながら、(繰り返しますが、)ME/CFSの病態・病因は未だにわからず、治療は対症療法しかなく、診断は症候(主観的症状と医師の診察による徴候)のみ(客観的な診断方法無し)。
 医者の少なからずは、謎めいた疾患の解明に燃える傾向を有します。私は低能の医者であり、ME/CFS患者の診療には全くしてません(身体障害者手帳の書類を書くのが唯一の直接的関与)が、ME/CFSが謎めいていること、及び、実際に患者さんとは診療以外の場面でかかわっているために、病気の本態を知りたいとの熱情が強いです。
 あれこれと文献を読んできて、私が最も確からしいと思えたのは、ミトコンドリア機能異常説。イギリスの Sarah Myhill 医師が提唱しております。彼女の論文を最初に読んだのは2010年。彼女は3つの論文を記しました。書物も公刊しております。

▼HPVワクチン接種後症候群とME/CFS
 ここで話はいきなり一見埒外に飛びます。子宮頸がんを予防するためのワクチン、つまりヒトパピローマウイルスワクチン(HPVV)接種後の前例無き/新規の症候群/病気(unprecedented/novel clinical entity)を2013年3月に知りました。医者達の認知がほとんどなく、多くの医者からは心身症とか精神疾患と言われ、ごく一部の医者だけが真剣に向き合っていることに、「またか」との思い。それでいろいろと調べたら、これは大変な事態だ、本物の病気だと確信し、知り合いの医師・報道人・政治家らの百人以上にメールしたのが同年の五月。幸いにも同年六月、中央政府としての定期接種(公費負担)は開始から二ヶ月で「積極的推奨」は中止されました。それでほっとして私は遠くで観察するような感じでした。そして、2015年、HPVV接種後の患者さんについての三冊の著作が公刊されて、私は読みました。医学界はあまり関心なく、産婦人科医の有力者達はあれほどの被害があるのに、HPVVの「積極的推奨」の再開を求めていることに驚き、私のリハビリ棄民政策反対運動に大変な尽力をして下さった二人の医師達(上昌広医師、久住英二医師)が被害者の父母達の運動に極めて否定的(久住医師は誹謗・中傷・攻撃)なことに衝撃を受けました。昨年の6月、思い切って、被害者連絡会の神奈川支部の山田真美子さんに電話。山田様は当初は私を信用することができなかったのですが、その後、私の真意をご理解して下さるようになって下さいました。被害者連絡会代表の池田としえ先生(東京都日野市議会議員[自民党])から電話がきてつながりました。以後、私はネット世界onlyですが、やりとりしてきております。
 2015年6月から、HPVVによる新規な症候群のことについて、低能医者ではありますが、勉強してきました。そうする過程で、驚きなのは、ME/CFSとHPVV接種後症候群の患者さん達との共通点。
・睡眠障害、短期記憶障害、思考速度の低下などの脳機能異常
・起立による低血圧とか頻脈、手足の末端とかの低温、消化機能異常などの自律神経症状
・関節や筋肉などの痛み、慢性的疲労(歩行などの運動困難、運動後のねたきり持続)
・音、光(電磁波)、匂い、化学物質(薬含む)への過敏症
・SPECT/fMRI等による脳機能検査での異常所見
・全員ではないにしても、神経組織への自己抗体の存在
 HPVV患者とME/CFSで異なるのは、前者では不随意運動(手足が勝手に動く)と激しい頭痛くらい。異なる点で最も重大なのは、HPVV患者の場合はワクチン接種後に症状が発生しており、ME/CFS患者の多くは風邪症状が発端である場合が多いこと。ME/CFS患者の中にはインフルエンザワクチンとかのワクチン接種後に症状が発現したかたもおります(個人的にそんな患者さんを知ってる)。

▼ミトコンドリア
 で、私は両疾患において、ミトコンドリア機能異常が共通しているとの仮説を抱いております。ミトコンドリア機能異常はあらゆる細胞の機能低下を説明できます。つまり、心筋、骨格筋、消化管、神経細胞、マイクログリア、アストロサイト、肝細胞の機能低下・異常はミトコンドリア機能の低下から説明できる。ミトコンドリアについての書物をいろいろと読んでわかったように思えたことは、ミトコンドリアが細胞が仕事の限界に達した時に自死 apoptosis を促す作用を有するのですが、機能が低下すると細胞の壊死 necrosis をもたらしてしまう傾向となること。apoptosis ならば基本的に有害な作用なく細胞は死滅しますが、necrosis の形態での細胞死は炎症をもたらす傾向。炎症とは自己免疫も含みます。ME/CSFもHPVV接種後症候群も脳内の炎症の存在が示唆されます。両疾患の全例ではありませんが、神経組織への自己抗体が存在します。
 HPVV患者についての医学論文をいろいろと読んで、ミトコンドリア機能異常が共通しているとの仮説を抱いているわけですが、ME/CFSとHPVV患者の病態の本態・始まりがミトコンドリア機能異常ではなく、ミトコンドリア機能異常は二次的、つまり何らかの「原因」による機能異常だろうとの仮説に傾いております。ME/CFSの本態がミトコンドリア機能異常と私は仮定してましたが、そうではないのではないかということでもあります。
 それでも、Sarah Myhillのミトコンドリア機能異常説の価値は高いと考えます。Myhillらが開発した ATP profile というミトコンドリア機能の測定手段は、客観的な診断手段として、ME/CFSとHPVV接種後症候群をバイオマーカーで定量評価できるからです。
 ME/CFSの診断は症候のみに依存。HPVV患者の場合も基本的にそう。Myhillらが開発したATP profile は両疾患の患者さんに実施されるべきだと考えます。イギリスの Myhill先生に有料で依頼するしかないのですが、中央政府による公費で実施できるようになることを願います。一臨床医の私の立場では、それを実現できる力が余りにも小さく、ME/CFSの理事達にミトコンドリア機能異常説を五年前から提唱してきてますが、未だに賛同が得られてません。

▼治療: 和温療法とrTMS
 ME/CFSと線維筋痛症に関して、和温療法の有効性は患者さんを診療している医師の中でだんだんと知られてます。和温療法は元鹿児島大学教授の鄭 忠和先生(循環器)が重症心不全患者の治療として開発。厚労省は先進医療として認めております。来年度から保険に入る見込みでしたが、残念にも中医協では見送りと決まったようです。
 ⇒ waon-therapy.com
 『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』黒川 祥子(2015.6.30 第一刷発行 集英社)には、酸素風呂という身体を温める治療が有効との事例が記載されてます。同書についての私の解説は:
facebook.com/no..836981126385013

 酸素風呂は怪しげですが、暖める作用が症状の緩和をもたらしたとの仮説が成立しますし、ME/CFSと症状の多くが共通するHPVV患者にも和温療法が有効である蓋然性は高いと考えております。HPVV患者への和温療法の試みについては、HPVV被害者連絡協議会の方に2015年6月に提案しております。残念ながらまだ実現はしてませんが、治癒にはならなくとも、症状の緩和はもたらされるかも知れないと考えてます。
 
 もう一つ。磁気で脳を刺激するrTMSという治療。この治療手段は保険ではできませんが、線維筋痛症のガイドラインに記載されてます。HPVV患者を診療されている信州大学の池田修一先生(信州大学副学長/医学部長・脳神経内科)によると、2015年12月の時点で三人に患者さんに試みられているとのこと。
- 2015/12/18 「子宮頸がんワクチン接種後の副反応」勉強会 ⇒ youtube.com/wat..eature=youtu.be
 rTMSについては57分頃から

 ME/CFSとFMはあちこちの痛みとか慢性疲労で症状の多くが共通しており、どちらも中枢神経の炎症があるとの仮説で共通し、MEとFMの双方の診断基準を満たす患者さんが極めて多いことが知られています。池田先生は上記の公演において、rTMSの効果については、おそらく敢えて言及されてませんでした。学会で発表する前の段階であり、じっくりと検討している過程にあるので、有効だと判明していたとしても言わなかったのではないかと思います。
 なんと、「はじめに」が異常に長くなってしまいました。この文章は戸田克宏先生とtwitterで問いかけをしたら、返信頂いたことが契機で、必要最低限の背景説明をするつもりでした。結果として、こうなり、読むのが困難になったと思いますが、このまま公開します。

@@戸田克宏先生とのやり取り
  @KatsuhiroTodaMD / twitter.com/@KatsuhiroTodaMD
戸田克宏先生のことを私が知ったのは数年前の日本医事新報での痛みについての総説でした。以来、戸田先生のお仕事(twitterも)を追い続けてきました。直接にご挨拶する機会が実現できなく..。 HPVV患者のことで @natrom 医師とやりとりする中で、twitterで直接に問いかけてみると決意し、そのようにした次第であります。

-2016/01/31 to 戸田先生
戸田先生、貴重なコメントありがとうございます。ME/CFSとFMのミトコンドリア機能異常についての論文には異なる結果があること存じてます。ME/CFSの本態がミトコンドリア機能異常とは言えなくても、それはあるとは言えましょうか。次のtweetお読み下されば幸いです

-2016/01/30 from 戸田先生
私が知る限り彼女は2つの論文を書いています。ME/CFSにはミトコンドリアの機能不全があるという説は有力な説です。ただそれが本態とまでは断定できません。今後の研究をまつ必要があります

CFSほど有力ではありませんがFMにおいてミトコンドリアに機能異常があるという報告があります。機能異常の差によりFMとCFSを区別できるという報告もあります。類似の様々な報告がありますが、微妙に異なる報告もあります。

-2016/01/30 to 戸田先生
@KatsuhiroTodaMD 先生、初めまして。澤田石と申します。ME(CFS)の会にかかわってます。FMの橋本さんとも懇意。ME/FMの病態にミトコンドリア機能異常ありとの仮説、かなり確からしいと思ってますが、先生の見解いかがでしょうか"

@KatsuhiroTodaMD 戸田先生、もう一言すみません。ME/CFSの本態がミトコンドリア機能異常との論文を書いてる Sarah Myhill doctormyhill.co.uk
彼女の仮説についてのご意見はいかがなものでしょうか"

@@ミトコンドリア機能異常説 by Sarah Myhill
ME/CFSの本態がミトコンドリア機能異常との仮説を強く支持してましたが、HPVV患者について池田先生らの論文等を読むに付け、本態ではなく二次的な現象だとの思いが強まっております。ミトコンドリア機能異常がME/CFSとHPVV接種後症候群において存在することは確実ではないかと考えております。

- Mitochondrial dysfunction and the pathophysiology of Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome (ME/CFS) : Norman E Booth, Sarah Myhill, John McLaren-Howard : Int J Clin Exp Med 2012;5(3):208-220
 ⇒ ncbi.nlm.nih.go..em0005-0208.pdf
- Chronic fatigue syndrome and mitochondrial dysfunction : Sarah Myhill, Norman E. Booth, John McLaren-Howard: Int J Clin Exp Med(2009) 2, 1-16
 ⇒ ncbi.nlm.nih.go..em0001-0001.pdf

- Targeting mitochondrial dysfunction in the treatment of Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome (ME/CFS) ? a clinical audit: Sarah Myhill, Norman E Booth, John McLaren-Howard: Int J Clin Exp Med 2013;6(1):1-15
 ⇒ ncbi.nlm.nih.go..em0006-0001.pdf

- Myhill's BOOK: "Diagnosis and Treatment of Chronic Fatigue Syndrome"
 ⇒ drmyhill.co.uk/..gue_Syndrome%22

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  文責: 澤田石 順(秋田高校山嶽部出身) jsawa@nifty.com
    ☆私は専門資格皆無の低「脳力・能力」の無い科医
   ▼Twitter⇒ twitter.com/sawataishi twilog.org/sawataishi
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    全国医師ユニオン union.or.jp
    東京保険医協会(勤務医委員会) hokeni.org
    医療制度研究会 iryoseido.com
    NPO法人 筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)の会 mecfsj.wordpress.com
    線維筋痛症友の会 jfsa.or.jp
    ポリオの会 www5b.biglobe.ne.jp/~polio
   ▼職場: 鶴巻温泉病院/回復期リハビリテーション病棟専従医(2002年2月~)
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