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独学女、コンセルバトワールに乗り込む 結局出待ちが最強

忘れもしない、ある年のバレンタインデー。私はフランスのとあるコンセルバトワール(音楽院)の前にいた。F先生を探すために。

大丈夫、いてもいなくても、ここに来たことに意味がある。

そう自分を奮い立たせ、扉を開け受付に向かう。
「F先生の部屋はどこですか?」
「◯号室だよ」
いとも簡単に部外者に教えてくれるフランスのセキュリティの甘さに驚く。さっきまでドキドキしていた自分が少しバカらしい。

本当にここで働いているんだ・・・

うろ覚えだった情報も、どうやら本当だったらしい。とりあえず、教えてもらった部屋の前にスタンバり、先生が出てくるのを待つ。中から聞こえてくる音は確かにサクソフォンの音。ここの部屋で間違いない。

F先生との出会いは遡ること3年半前。フランスの地方で行われたStage(スタージュ)と呼ばれるサマースクールだった。当時高校3年生だった私は、夏休み直前に学校を少しばかりサボってこのサマースクールに参加した。
中学・高校と吹奏楽部でサクソフォンを吹いていたが、残念ながら強豪校でもない。個人レッスンで先生に習ったこともなければ、ソロの曲なんて吹いたこともない。それでも、
《サクソフォンと言えばフランス!いつかフランスでサクソフォンの勉強をしてみたい!》
というよく分からない夢が、当時の私を大いに後押しし、実力不足も甚だしいながらに参加を決めた。初海外。初一人旅。
1週間弱のスタージュは夢のような時間で、初めて親に連絡したのは「明日もレッスンしてくれるって言うから、飛行機の時間変えてもらえないかな?!」だった。まさに【便りのないのは良い便り】(残念ながら予定通り帰国した)

そして今、3年半を経て、F先生と再会しようとしている。《出待ち》という超不確実でありながらも可能性のありそうな形で・・・

サクソフォンの音が止まった。そろそろ出てくるか。用意してきたフランス語のフレーズを思い出す。

ガチャ

ドアから出てきた姿を少し見ただけで分かる。F先生だ。あれ?フランス語で何て話しかけるんだっけ?えぇぃっ!もう何とでもなれっ!!!
「ボンジュール!!」

このF先生との再会がその後の私の人生を大きく、おおきーく変えたことは言うまでもない。
さて!挑戦のはじまりはじまり!!!!!

・・・やっぱり出待ちが最強だった。ありがとう、私の行動力。



理系女子→なぜか音楽の道へ
独学でフランスの音楽院に入学し、サクソフォン教師の国家資格を取得
現在パリ郊外の音楽院で教鞭を取る

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