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【十字軍の城塞★放浪記】アレッポ城/シリア

قلعة حلب

今日はシリアの北の要衝、アレッポ(現地名ハラブ/乳の意味)のランドマーク、アレッポ城です。
先に地図を出しておくと、場所はこのあたり。

シリアの首都ダマスカスに次ぐ第2の都市で、古代から中世にかけて栄えたエジプト~シリア~トルコを結ぶ南北の幹線道路と、ビザンツ帝国~アレッポ~バグダードを経て、広い意味でシルクロードと連結する東西の道が交差する十字路にあります。

町の歴史は紀元前3千年にまで遡り、ヒッタイト、アッシリア、ペルシャ帝国、セレウコス朝、ビザンチン帝国を経て636年にイスラームの支配下に入ります。

この城ががぜん!重要度を増したのは十字軍時代。突然現れた蛮族の襲来に、イスラーム勢は驚き、諸勢力に分裂して内紛に明け暮れていたため、まったく対抗できずぐだぐだの状態でした。

それに対し、初めて反撃を成功させたのがザンギー朝の創始者であるザンギー(イマードッディーン)と、その息子マフムード(ヌールッディーン)でした。以降、12世紀にはこのアレッポの城砦がザンギー朝の居城になります。

もともと石灰岩質の白い丘を要塞化しています。
なかなか全貌がカメラに納まらないので、こちらの本の表紙を使わせていただきます。

周囲はぐるりと2.5キロメートル。標高は440メートルで、楕円上部は280×160メートル。とすると面積は44,800平方メートルなので、東京ドームと比較してもよくわからないのですが、だいたい東京ドームと同じぐらい(46,755平方メートル)。ドームは最大55,000人収容できますから、まあアレッポの城砦もやる気になればそのぐらい収容できるってわけです。

写真ぼけぼけですみません

アレッポの城砦といえばこのエントランス。入口に続く陸橋は20mの高さがあります。陸橋と周囲の堀は、ザンギー朝の後のアイユーブ朝時代のもの(サラディンの死後生まれた息子ガーズィーによる)。城門の中央には6つの油落としが見えます。

油落としを下から見上げるとこんな感じ。ここから熱した油などを落として、攻め寄せる敵を撃退します。城門には2匹のからみあう龍が彫り込まれ、コーランの聖句と、建築の経緯を記録した碑文があります。

右の手前に見える丸い屋根がモスク。
中央のやや左に見えるのがアイユーブ朝時代の宮殿の遺跡。
遠くに見えるのが城壁の跡です。
小高い丘なので町が一望できます。

こちらはヌールッディーンが建てた城内の大モスクのミフラーブ(メッカの方角を示すくぼみ)。木彫りの精巧な細工だったようですが、フランス統治時代に失われたそうです。そのおかげ?で、もともとのミフラーブの石積みの方法がよくわかります。

こちらはアイユーブ朝時代に創られた宮殿の入り口です。上の方はムカルナスと言われる文様で、天から降り注ぐ滝のようです。石で曲面をつくるための知恵でもありますが、これ自体が芸術的な文様として発達していきます。下の方は、玄武岩と石灰岩で2色のマーブル模様をつくっています。

こちらは宮殿の中の謁見室の天井装飾。実際に使われたのはマムルーク朝時代です。ふんだんに木が使えるのは権力者の象徴でもあったでしょう。

城は華やかな王者たちの宮廷であると同時に、軍事拠点でもあり、政治の場でした。こちらは貯蔵庫⇒貯水槽⇒牢屋と姿を変え、死んだ囚人を投げ込む部屋となりました。

アレッポの城砦の牢屋に囚われていた代表的な人は、なんといっても十字軍のルノー・ド・シャティヨンです。15年幽閉された後、釈放されてからはサラディンの不倶戴天の敵として立ちはだかります。

ところで、中東の国では時々、夜、遺跡でコンサートや劇を開催することがありました。
私が放浪していた時、アレッポでも夜のロック・コンサートがあったので、「夜の城砦に入れるまたとないチャンス!!」と思って行ってみました。

闇夜に浮かび上がるアレッポの城砦
エントランスはこんな感じ。
ライトアップも控えめでいいですね。
中世は松明を焚いていたでしょうから
イメージが近いのでは。
城門をくぐったところ。
入口を入るとすぐ直角に曲がり、
何度も角度がついた狭い通路が続き、
さらにあちこちに油落としがあるので、
入口からの襲撃はまず無理そう……。

こちらのアレッポの城砦は、2/26から放送の『太陽の城  月の砦』の最初の舞台になります。ザンギー朝君主ヌールッディーンに仕えるため、青年ユーセフはダマスカスからアレッポまで馬を飛ばします。

ダマスカスからアレッポまでは、グーグルさんは3日と11時間と言ってますが、これは24時間休みなく歩いた場合なので、1日8時間歩いたとして12日ぐらい。馬だと数日の距離です。ざざっと東京~名古屋ぐらいの感じかな。

このアレッポの城塞の広場で、ヌールッディーン・マフムードの妃アーミナとユーセフが出会います。

では今回はこのへんで。

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