قلعة مصياف

2024年3月７日現在、NHKのFM『青春アドベンチャー』で「太陽の城 月の砦」を放送しています。今日は、そこにまつわる暗殺教団の城、シリアのマスヤーフ城をご紹介します。

「アサシン」って言葉、少し前は映画とかでわりと聞いたんですが、最近あんまり聞かなくなりましたね。命じられたらみずからの命と引き換えにして相手を確実に殺戮する、プロの暗殺者（刺客）のこと。
そういえば、ちょっと前は「自爆テロ」という言葉もよく聞きましたが、最近はこれもあまり言わなくなったような🙄

さて、アサシンの語源はアラビア語で「草」🌿を意味するハシーシュ。それがヨーロッパに入ってアサシンとなったという説があります（フランス語はHを発音しないので）。

一説にはこの「草」🌿というのは大麻のことで、それを使って幻覚を見せたともいわれています（暗殺者は必ず死ぬ前提なので、死の恐怖を和らげて恍惚状態にするために）。
まあ、これは伝説の域を出ませんが。

で、マスヤーフ城は、そのアサシンの拠点となっていた「暗殺教団の城」。シリアの山脈の山間にあり、鬱蒼と茂る糸杉の彼方におどろおどろしい山上がそびえ立っています。

もともと東ローマ帝国の時代からこの高台に城砦が築かれていたそうですが、1140年にスィナーンという一人の男が占拠します。
この男のこそ、闇の暗殺教団を組織した者。「山の老人」と呼ばれて12世紀の中東を恐怖に陥れた謎の人物です。

山の老人スィナーンはサラディン（サラーフッディーン・ユースフ）とほぼ同世代。ある時はサラディンの命を狙い、またある時はザンギー朝や十字軍の要人の命を狙い、乱世に不気味な暗い影を落とします。

スィナーンは1176年5月にサラディン暗殺を企てて失敗。サラディンは報復として、このマスヤーフ城を包囲しますが、なぜかすぐに兵を引き上げています。

一説によると遠征中、守りが固いはずのサラディンの天幕に暗殺者が忍び込み、毒ケーキと「そなたは我らの手の内にあり」という脅迫の書状をまくらもとに置いていったという話が残っています。
まあこれも尾ひれのついた伝説でしょう。
ともあれ・・・

甘いもの好き（歴史的根拠はない）のサラディンが、うっかり毒ケーキを食べなくてよかった🍰

というわけで「太陽の城 月の砦」のドラマ第９回は、この時の事件をもとにしています。

1176年は4月に皆既日食☀🌕もありましたから、大変な年でしたね。
もしかしたらスィナーンは、この日食を「天啓」と受け取って暴挙に出たのでは？　と想像したりもしています・・・あくまで想像。いや、妄想🌀🌀🌀。

スィナーンはシーア派の一派であるイスマーイール派のさらに一派であるニザール派。ニザール派の開祖ハサン・サッバーフのもとで教育を受け、自らを神と名乗り、独特な信仰のもとに信者をたばね、地上に自らの神の世を出現させようとしたのかもしれません。

そのため、暗殺教団の城は他の十字軍の城とはかなりおもむきが異なります。

敵襲を防ぐ砦であると同時に、暗殺者を育てる訓練所でもあり、スィナーンを神と仰ぐ信者たちが暮らす閉鎖された宗教空間でもあったので、城の中には何に使ったかよくわからない小部屋のような空間がたくさんあります。

暗殺者でもある信者たちが共同生活を送るわけですから、いろいろ想像は膨らみますね。

現在、ニザール派は過激な暗殺教団ではなく、普通に穏健なシーア派の一派としてシリアを中心に4万人程度いるようです。

マスヤーフの場所はこのへん↓

日本もそうですけど「山」っていろんな集団の隠れ家にもなるし、「聖なる場所」「異世界」としてとらえられることもあります。日本の山岳信仰とちょっと似てるかもしれませんね。

も少し近づいてみましょう。地形がわかりやすいですね！グーグルマップさんが付近の城砦も表示してくれました（できる子♥）↓

⬅️山を越えた海沿いにマルカブ城（マルガット城）。
↖️北の山上にはサラディン城。
➡️東にはハマ城（ハマはダマスカス～アレッポの幹線道路の途上にある都市）。
⬇️南には有名なクラック・デ・シュバリエ（ヨハネ騎士団の城）。

まさに城の宝石箱💎！！！萌える地形です✨

では今回はこのへんで～★😊