開けて ショートショート
雨の降るベランダに、黄色いレインコートが浮いている。
足のあたりには何もなく、顔周りは黒く影を落としている。
周りには何も引っかかるモノはない。
なのに、空中で静止している。
ゆっくり腕の辺りの布が上がり、裾が下される。それが何回もゆっくり繰り返す。
窓にコツン、コツンとレインコートの裾が当たって音が鳴る。
男の息は少しづつ早くなる。これは多分、本物だ。
こんな場所に1人ではいられない。
男は財布だけ持って、雨に濡れながら家を飛び出す。
外からベランダを見る余裕はなかった。
もっと言えば周りを見る余裕はなかった。
雨の日は事故が起こりやすい。
大きなクラクションとブレーキ音が響く。
しばらくして、その街では黄色いレインコートを着たお化けにあうと、不幸な目に遭うという話が広がった。
ある雨の日、またレインコートがコツコツと窓を打つ。
しばらくして、空が晴れ始める。
ソレは少しだけがっかりして、レインコートを脱いだ。
「雨宿りしたいだけなのに」
お題 オバケレインコート 409字
あとがき
ギリギリ書けた
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