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宴会 毎週ショートショート

妖怪、神、その他諸々の存在に対してサービスを行う旅館が日本国名にはいくつか存在する。そんな旅館の中でも特に、鬼にご贔屓にされているのが当旅館『地獄屋』である。

東館は、苔が少しはえた石畳を登ってすぐの場所にある。台車の上には洋から和まで、あるだけのお酒を乗せてきた。既に20個もの樽を開けているのに、よくそんなに飲めるものだ。
「ルームサービスをお持ちしました」3mほどの玄関扉の前で声を張り、呼びかけると1人の鬼が出てきた。

入ってすぐの大広間では沢山の鬼たちが宴会を行なっていた。
「お酒、運ぶの大変だったでしょう」
「お気遣いありがとうございます。お客様の方は大丈夫ですか?」玄関先に出てくれたこの鬼は多分幹事なのだろう。長いツノが全然赤くなっていない。
「確かに大変ですけど‥」少し息を吐き、周りを見る。どんちゃん騒ぎをする鬼は幸せそうだ。
「久しぶりにみんなが笑っている姿を見れて嬉しいです」
お客様はそう言いニカっと笑った。

410字 お題 ツノのある東館(1行目で惹きつけて)

あとがき

確かにショートショートを書くときは引きの強い書き出しを意識している気はする。難しいけどね。

たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただいています。オイツケタヤッター



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