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【往復書簡】何色が好きですか?

のんちゃんへ。

5月11日に外出規制が少し緩くなってから、私の住む南フランス・モンペリエの郊外は少し騒がしくなりました。外出禁止がスタートした3月17日からしばらくの間、車がほとんど通らなくてシンとしていたのですが。こうやって日常に戻っていく人がいるように見える一方で、私の時間はなんだか妙な進み方をしているように感じます。生活自体ははコロナ前とはあまり変わらず、むしろ忙しくなっていろいろな予定があったのに、3月、4月に現実感が伴いません。2月に至っては日記を見ると「あの頃」って感じです。

地理感覚もおかしくなりました。フランスではまだ規制があって隣の県にすら行けないのに、引きこもっていながらもzoom等によって爆発的に拡張・接続する世界があって、地球は本当に丸いのかなと疑いたくなるほどです。今は車で3時間だけれど友達がいないバルセロナより、東京の方が圧倒的に近い。もしかしたら私は、旅行先を決めるときに地図を見たり、経路や所要時間を確認したりすることによって、地理感覚を保っていたのかもしれません。

と、時間感覚や地理感覚を憂う一方で、完全にコロナ以前の世界に戻りたいかと言ったら、単純に戻るのはいやなんだ。環境とか政治とか食糧とか住まいとか、見えてきた問題を見なかったことにしちゃうのは嫌だな、と。一時帰国できないのもものすごく嫌だけれど。

さて、今回ののんちゃんからの質問は、「好きな季節はいつか」。のんちゃんのいうように、いつの間にか、春のコートではなく薄手のジャケットを着る季節になってしまいましたね。ある友達が「今年は全人類が春を見逃した」と言っていました。私は半径1キロ以内の春の自然は堪能したけれど、それでもやはり見逃した感があります。暖かくなって人々が浮かれたり、人々が軽装になったり、お出かけが増えたり、別れに涙したり、出会いにドキドキわくわくしたり、といった祝祭感を含めて春なのだろうなあ。

のんちゃん同様、私は初夏もとても好きです。東京にいた時、一番きれいな季節はGWの頃じゃないかなと思っていました。梅雨の前の、空気が軽くて、若葉がぐいぐい伸びる感じが好き。でも、私が今一番好きなのは夏至です。(また夏至!!) 前に熱く語った文化的背景に加えて、単純に気候も好き。夏至は日本だと梅雨の真っただ中だけれど、今住んでいる南フランス・モンペリエでは夏至はからっとして、いい季節なのです。

夏至の頃はまさしくミッドサマーで日中は暑いのですが、夕方がとてもすてきです。東京だと夏至の日でも日没が19時だから夕焼けの時間帯って忙しいのだけれど、こっちは日没が21時半くらいなので夕焼けを堪能しやすいんです。晩ご飯を夕焼け色の空の下で食べられます。すべてがオレンジ色のフィルターにかかって見えます。オレンジ色が好きなのもあって、大好きな季節です。

そういえば、のんちゃんの好きな色を知らないな。変化球の質問を投げつけすぎなので、それを今回の質問にします。のんちゃんは何色が好きですか?

お互い、無事でいましょう!
では、またね。

清香

追伸:トップ画像は、シルク・ド・ナヴァセルという谷間の小さな村で撮った「郵便受けを探せ」写真です。今年の夏、フランスでは国内旅行は許されるらしいので、この静かな村にも人が詰めかけそうだな。フランス人のヴァカンス欲はすごいです。旅行を許さなかったら暴動が起こるから、許しちゃったのかなと思うくらい。


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