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同人誌の売り上げが2冊

イベントでの委託販売をお願いした、同人誌の売り上げが2冊だった。2種類あって、1冊ずつ買っていただいたことになる。お一人が2種買ってくださったのか、お二人が1種ずつ買ってくださったのか、そのどちらかである。まず、そのお買い上げくださった方に感謝をしたい。ありがとうございます。本を楽しんでいただければ幸いです。

あまり売れなかったことによって、私は落ち込んでいる。稼ぎたいから本を作っているわけではなく、書いた小説を読んでもらいたいから本の形にしているのだ。なのに、手に取ってもらい、読んでもらうことさえ叶わないのだ。

しかしこの、まず手に取って見てもらうということが、小説の同人誌を売っていく上では一番難しいところなのではないかと思う。イラストならぱっと見て好みかどうかの判断はつく。マンガも同様に絵柄で判断できるし、何ページか読んでみれば雰囲気は伝わる。文章作品はその点、しばらく読まなければ、自分の好みか、自分に必要かどうかがわからない。俳句や短歌や詩も文章である以上、受け取りにくさはあると思うが、小説よりは速く届くと思う。

そして一般に同人誌は安くはない。同じ値段でプロが作ったきちんとした本が買える状況において、あえてアマチュアが作る、印刷物として質が高いとは言えない場合が多い本を選ぶ人は、そもそも多くはないと思う(これは小説同人誌の話で、イラストやマンガ、また二次創作同人誌ではちょっと話が違ってくるだろう)。

ときどき、プロが作っている同人誌というのもあり、それはもちろん売れると思う。そこには希少性があるからだ。また先ほど、「(同人誌は)印刷物として質が高いとは言えない場合が多い」と書いたが、逆に同人誌印刷だからこそできる方法を使って、いい意味で凝り過ぎている本を作っている方もいる。それももちろん売れると思う。そこにも希少性があるからだ。そんなふうなレア感だとか、ネームバリューだとか、流行性だとか、何らか人を惹きつけるものがないと、小説同人誌を売ることは難しいのである。

しかし、上記したような武器を持たない書き手でも、本を多く頒布できている人はいる。ネットで自作を発表している、表紙などのデザインに凝る、頒布イベントでのディスプレイに凝る、売り場で立ち止まってくれた方とコミュニケーションを取るなど、アピールの手段はいろいろあるのだ。

本を作って不特定多数に頒布しようとする人々がそんな努力をされているであろうことがわかっているからこそ、「売れない」という事実が、「私の作品、私の本の作り方、アピールの仕方のいずれか、もしくは全部」に魅力がないと言っているように思えてしまうのだった。

さて、そこで腐っていても何にもならない。その状況を改善するために何をすればいいのか、を考えてみるのが建設的だろう。例えば、せっかくnoteをやっているのだから、もっと自作を載せてみるとか。私の本はデザインも自分で行っているのだが、デザインの得意な方にお願いしてみるとか。あとはイベントに出るならもっと人とコミュニケーションを……取る……これはコミュ障には難しいことなのだが……。すぐには改善できない最後の案はともかく、何かもっと魅力的な本が作れないかと考えてみることは大事だろう。

だが、やっぱり大事なのは、内容である。例えば、素敵なデザインをどなたかに施してもらえたとしても、小説本文が面白くなければ台無しである。むしろ、外見に惹かれて買ってみたけど中身が面白くないというのは、買った人の納得がいかないのではないだろうか。というわけで私はまず、もっと面白い小説を書かなくてはならないのだ。売るための施策には、面白い物ができてから取り組んでも遅くはないだろう。

売るための施策ありきで売れる物もあるとは思う。でもそれは順番が逆だと思う。まず良い物ありきで、それを広めたいと思うからこそ、売るための施策を考えるのではないか。

最初に、1人か2人が買ってくださったと書いた。その方は、何らか良いと思って買ってくださったのだと思う。今回のことで私が最も大事にしなければいけないのは、拙い本かもしれないが、それでも誰か1人か2人には届いたということだと思う。

自分の小説をどんな人に届けたいかと聞かれたら、自分の小説のような物を必要としている人、と答える。そんなピンポイントに誰かに物を届けることもまた困難なことで、だからなるべく多くの人の手に届けて、その届いた人の何割かにでも気に入ってもらえればいい、という形になっていると思う。なのでともかくたくさん売ることは悪いことでは決してない。

こんなささやかに売っている薄い本に気付いて手に取ってくださった方がいる。それは、ピンポイントでその人に必要とする物を届けることができているということかもしれない。それが例え1人にでも起こっているのは、悪いことではないと思う。そんな奇跡みたいな出来事が、希にではあるが起こるのが嬉しくて、私は本作りを止めようとは思わないのだ。

宣伝はしておく。


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