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あなたの満足が誰かのためになっている、こともある

「髪きれい」
バスの中で、前の座席に座った人の髪を見て思った。そう思っただけで、別にどうもしない。ただ「きれい」と思う気持ちは、悪くないものだと思う。なので、悪くない気持ちにさせてくれた、髪の綺麗な前の座席の人に、密かに少し感謝をする。

もちろんそのきれいな髪の持ち主は、その髪を見る他人のことなど、考えもしていないだろう。身近な人に髪がきれいだと思われたい、というくらいの気持ちはあるかもしれない。だが、赤の他人にどう見られようと、本人はどうでもいいのではないか。

赤の他人は結構、赤の他人を見ているものである。意識的に他人を見ている人もいれば、別にどうでもいいけれどもなんとなく視界に捉えてしまう人もいる。

見ようとして「きれい」なものを探している人は、きれいなものを見つけられると嬉しいだろう。そして、積極的にきれいなものを見ようとしていない人だとしても、きれいだとか、かわいいだとか、好ましいものがふいに視界に入ってきた状況は、喜ばしい出来事になるのではないか。

髪のきれいな人は、多分、自分の満足のために髪を整えてきた。その人が満足できているのならば、それでもう十分なのである。だけどさらに、誰かのちょっと手間のかかっているであろうきれいさは、別の誰かにちょっといい感覚を持たせる。そういうふうにささやかに、いい感じは伝播していく。

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