見出し画像

見えないものを画像化する困難

パソコンでソフトウェアを使っていると、そのユーザーインターフェイスにアイコンが使われていることがある。ソフトウェアの機能や入力方法などについて、文字で書いてあるより、絵や記号になっているほうがわかりやすいこともあるためだ。

だが、この「機能のアイコン化」はできるものとできないものがあるだろう。例えば「切り取り」なら「切る」行為から「はさみ」が容易に連想できるので、はさみのアイコンを作ればいい。しかし、何かを切る時にはさみを使わなくなる未来がないとは言えない。そんなような状態になってしまっているのが、「保存」アイコンである。

保存アイコンには永らく「フロッピーディスク」が描かれていた。

3.5インチフロッピーディスク

しかし、現在においてフロッピーディスクが使われている例はあまりに少ない。これが何なのかわからない若者も多く存在するだろう。手のひらサイズの樹脂製の板(中に磁気ディスクが入っている)にデータを記録できるのだ。容量は1.44メガバイトである。ちょっとした画像はもうここには入らない。

フロッピーディスクの認知度の低下によって、保存アイコンに「パソコン本体」が描かれている例も見受けられる。こんな感じだ。

モニターとデスクトップパソコン

しかし、このアイコンも昨今では安心できないように思う。スマートフォンの普及により、パソコンの保有率は減少している。

デジタルを活用する際に必要となるインターネットなどに接続するための端末について、2021年の情報通信機器の世帯保有率は、「モバイル端末全体」で97.3%であり、その内数である「スマートフォン」は88.6%、パソコンは69.8%となっている

総務省|令和4年版 情報通信白書|総論 (soumu.go.jp)

また、パソコンといってもデスクトップ型ではなく、ノート型を想像する人も多いだろう。

2022年の国内PC市場は、前年比14.9%減の945万台となり、そのうち、ノートPCは17.2%減の720万台、デスクトップPCは6.2%減の225万台となった。

国内PC市場は2023年が需要の底に。1月出荷は台数減でも金額増。JEITA調べ - PC Watch (impress.co.jp)

といった現状、「保存」アイコンはいずれこうなるのかもしれない。

ノートパソコン

保存アイコンにデスクトップパソコンが描かれている時点で既におかしかったのではあるが、そこにノートパソコンが使われるとなると、「パソコンの中にパソコンが入っている」感が強まってしまう。マトリョーシカか。

「保存」のように「見えないもの」を画像化することはとても難しい。空気を絵にしろと言われているようなものだ。だがここには、ものすごい発見が生まれる土壌があるように思う。なんとそれをそう表現してみせるのか!しかしなるほどそのとおりだ!と人類を驚かせるような素晴らしいアイコンができるかもしれない。デザイナーの方に頑張ってもらいたい(他人任せ)。

お気持ち有り難く思います。サポートは自費出版やイベント参加などの費用に充てます。