#290 白ゆり

お寿司ランチ後、母と高田馬場駅の近くにあった喫茶白ゆりへお茶をしに行った。(平成17年閉店)地下にあるレトロな感じの喫茶店だった。
赤いビロードのソファが並んでおり、少し薄暗い昭和や平成時代にあった雰囲気だった。そこで僕はフルーツパフェを頼んだ。
フルーツパフェなんて1年半振り位だった。この一年、喫茶店でゆっくり時間を過ごすという事とは無縁だった。
僕は合格の報告を応援してくれていた中学校時代の恩師に電話しに行った。
公衆電話から10円玉を複数枚用意し、掛けた。
恩師はとても喜んでくれた。こうして恩師に合格を報告できたことはとても嬉しかった。今後への希望と期待で胸が高鳴っていた。
高校ラグビー時代の監督には直接、北海道へ帰った際に行くことにした。実家は東京になったが、北海道の実家はまだあり、母と共に1年振りに帰北することになった。
この日は翌日の朝刊配達向けのチラシまとめの作業をする為、いつも通り埼玉へと戻った。
配達所でお世話になった指導係の配達員や時折、チラシ入れを代わりに行ってくれたリーダーに合格を報告した。みんな僕のこれまでの頑張りを称え、合格に喜んでくれた。
少年にも夕食を食べに行く時に報告したところ、珍しく笑顔で喜んでくれた。同時にこの11カ月自分が頑張り切れなかったことを反省し、これから心を入れ替えて頑張ると約束してくれた。
僕も真剣な彼の表情と眼差しを見てきっと少年も頑張るだろうと素直に思えた。
僕の新聞奨学生としての生活も10日を残すばかりとなった。
最低限の荷物しかない部屋と言え、引越しへ向け少しづつ、部屋の片づけを行った。
合格発表から数日後、配達員のリーダーから合格祝いにボールペンを頂いた。予測外の贈り物に僕はとても嬉しかった。この11カ月リーダーは僕を見守り、支えてくださった。
指導係の配達員は夕食をご馳走してくれた。11カ月教えて頂いた事に対する感謝をしっかり伝えた。
人の優しさ温かさが心に沁みた。
続く…

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